大根仁『ハロー張りネズミ』は最高の探偵ドラマだ ジャンルレスな作風の魅力

 2話は、25年前に父親が殺された事件について調べ直してほしいと言って現われた謎の美女・蘭子(深田恭子)が中心に描かれる。明らかにヤバそうな案件を「困っている美人は放っておけない」と所長の忠告をよそに引き受けた探偵2人。蘭子のもとに突然送られてきた、父親が殺された時の音声テープと、彼女が語る父親が巻き込まれた陰謀のあらすじを元に、25年前の事件とそれに関わった人たちが動き出す。

 ここでも、家族にまつわる悲しい過去を持った人たちが存在する。父親を殺された蘭子はもちろん、吹越満演じる、蘭子の父親の右腕と呼ばれていた男・仲井である。彼の過去はまだ明らかになっていないが、荒れ放題の彼の家に訪れたグレが発見し目を見開いた、白い布に覆われた四角い箱の謎と、仏壇に置かれた、子供の顔写真を含めたいくつもの写真が、会社を辞めた後の彼の人生の過酷さを物語っていると言えるだろう。

 事件が大きいだけに、探偵事務所の3人がそれぞれの方向から事件を探った2話の終わりは、所長の手柄によるダイイングメッセージの発見と、グレが連れてきたキーパーソン・仲井、そして電話によってもたらされる、五郎が見つけだしたもう一人のキーパーソン・南(リリー・フランキー)からの過去の書類の発見と、それぞれの手柄を持ち寄る形でメンバーが集結していくのがなんともいい。血文字を脳内で変換して怖くなっていた五郎と所長が、ドアが開くのも電話が鳴るのにも驚く姿を微笑ましく見ていたら、書類を手にしてご満悦の表情で五郎に電話する南の元に手榴弾が投げ込まれ、「えっ?」という声と共に南の事務所が爆発するというオチに衝撃を受ける。そして第3話の予告から見てとれる五郎とグレの凄まじいアクション。今夜も楽しみで仕方がない。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
金曜ドラマ『ハロー張りネズミ』
TBS系にて毎週金曜よる10:00~10:54放送
原作:弘兼憲史「ハロー張りネズミ」(講談社「ヤングマガジンKC」所載)
脚本・演出:大根仁
プロデュース:韓哲、市山竜次
出演:瑛太、深田恭子、森田剛、中岡創一(ロッチ)、片山萌美、蒼井優、リリー・フランキー、山口智子
製作:オフィスクレッシェンド、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/hello-harinezumi/

関連記事