『HiGH&LOW』と『たたら侍』は表裏一体の作品だーー共通するLDHの本物志向
「力は大切なものを守るために使う」表裏一体の『たたら侍』と『HiGH&LOW』
アクションのカタルシスを追求した『HiGH&LOW』と、本物の魅力にこだわりぬいた『たたら侍』。動と静、裏と表のような二つの対照的な作品は、実はどちらも全く同じ思想のもとに作られている。それは、『たたら侍』が掲げるテーマのひとつ「伝統を守ることの大切さ」に隠されているのである。伍介は、仲間・家族・伝統を守るため自身の信じる正義=力のために侍になろうとするが、実際には力を求めたことで、親友の新平や、尊敬する侍・真ノ介、そして村や家族を危険にさらしてしまう。覚悟なく力を求めた結果、大きな代償を払うことになるのである。そして、伍介は自身が否定してきた「守る」精神に救われ、村下として生きることの誇りを取り戻していく。
保守的・消極的に思われがちな「守る」という行為が、本作では重要なものとして描かれているのである。これは「和」の精神と言い換えてもいいだろう。仲間を頼る、あるいは隣人たちと助け合う“互助の精神”が最終的に問題を解決するのだから。実はこの考え方は『HiGH&LOW』でも描かれてきたもの。『HiGH&LOW』では、力を正義と信じ、MUGENの仲間たちを頼ることができなくなった琥珀(AKIRA)が悲劇の発端となり、友人の九十九(青柳翔)たちに救われる物語でもある。また、スピンオフ作品『HiGH&LOW THE RED RAIN』では、雨宮兄弟の長男・尊龍が「拳は大切なものを守るために使え」と弟たちを諭すなど、自衛以外に使う力の危うさを説いている。「守るためだけに力を使う」という信念は、まさに『たたら侍』で描かれている“真の侍”の姿だ。そういった意味では、『たたら侍』は『HiGH&LOW』と真逆のアプローチと同じ思想で作られた、表裏一体の作品なのである。また、“本物”の画の力で勝負することで、言葉の壁を越えた圧倒的な熱量を観客に伝える点も同じ。『HiGH&LOW』と同じく理屈で考えず、スクリーンに身をゆだねて鑑賞するのがオススメだ。
■藤本 洋輔
京都育ちの映画好きのライター。趣味はボルダリングとパルクール(休止中)。 TRASH-UP!! などで主にアクション映画について書いています。Twitter
■公開情報
『たたら侍』
5月20日(土)より、新宿バルト9 TOHOシネマズ新宿ほか全国にて公開
監督:錦織良成
エグゼクティヴ・プロデューサー:EXILE HIRO
出演:青柳翔、小林直己、田畑智子、石井杏奈、高橋長英、甲本雅裕、宮崎美子、品川徹、でんでん、氏家恵、橋爪遼、安部康二郎、菅田俊、音尾琢真、早乙女太一、中村嘉葎雄、佐野史郎、豊原功補、山本圭、笹野高史、AKIRA、奈良岡朋子、津川雅彦
配給:LDH PICTURES
(c)2017「たたら侍」製作委員会
公式サイト:tatara-samurai.jp