『君のまなざし』が目指すエンターテイメントとは? 梅崎快人×水月ゆうこ×大川宏洋鼎談【PR】

ーー演出面についても教えてください。たとえばドローンでの空撮や水中での撮影、幽霊のCGなど、様々な手法が使われている作品でもあります。

大川:その辺りは、ベテランである赤羽監督の引き出しの多さによるものですね。脚本の時点ではまったく想像していなかった手法で撮るので、僕らも驚きました。たとえば健太が溺れるシーンは、プールで撮影したんですけれど、本人に重石を付けて沈んでもらっていて。スタントを極力使わないで、リアルさにこだわっているのが大きなポイントです。ほかにも殺陣のシーンとか、カット割りを多くして再生スピードを早めれば、素人がやってもそれなりに動きのある画にすることができるんですが、できるかぎりワンカットにこだわって、僕らも稽古を重ねて挑んでいます。監督のこだわりが随所に現れた作品でもあるので、ぜひ細かなところまで観てほしいです。

 

ーー個人的には、『エクソシスト』にオマージュを捧げた怪奇シーンが一番好きでした。80年代ホラーに代表されるように、恐怖と笑いは紙一重なところがあると思うんですけれど、この怪奇シーンにはユニークさも感じられました。畳み掛けるような展開に、思わず吹き出してしまって。

水月:たしかに、あのシーンはおかしかったです(笑)。決して笑うシーンではないのだけれど、本番での黒田アーサーさんの演技が、リハーサルで代役をした大川さんの演技とまったく一緒で。先ほど、自分を叩くシーンがあったと言っていましたが、その叩き方まですっかり同じで、「本当に気持ちがリンクしているのかな?」なんて思いました。

ーー怖さの中にユニークさが感じられるのは、本作のチャーミングなポイントだと思います。なにかインスパイアされた作品や監督は?

大川:M・ナイト・シャマラン監督の『シックス・センス』には、影響を受けています。幽霊が出てくるという共通点のほかに、演技にも仕掛けがあって。一度、通して観た後に、主人公ふたりの演技に改めて注目して再び観ると、ゾッとするところがあると思います。ほかに影響を受けた作品でいうと、『陰陽師』ですね。中学時代に社会科の研究課題で陰陽師について調べたことがあって、京都に取材にいって、印や式神を研究してみたりしたんです。今回は霊が出てくる映画ということで、改めて勉強しました。

 

ーーシャマラン監督と聞いて、腑に落ちるところがありました。独特の不思議な作風には、どこか似た雰囲気があるかもしれません。シャマラン監督の新作『スプリット』がちょうど公開されていますが、製作にあたってシーンの流行などはどれくらい意識していますか?

大川:劇場に足を運んでくださるお客様に、まずは楽しんでほしいと考えていて、そのために時代性を意識はしています。私たちの映画には、伝えたいメッセージがあるわけですが、それをただ押し付けるだけではダメだなと。製作者と観客の間にコミュニケーションが成立して、初めてエンターテイメントになるし、メッセージも伝わるんじゃないかと。単なるエゴの押し付けにならないように、興味を持っていただける題材、作風を意識して、その上で私たちの考え方を伝えていけたら。

梅崎:たとえばセリフの中に「やり直しのきかない人生はない」とか、「過去は変えられる」とか、人生に深く影響を与えるような言葉があります。それが真に迫るように、観客の方の心を打つように話すことは、演じる上でも大きなポイントでした。

 

水月:私自身、あかりのセリフに感化されて、心境に変化がありました。初めての経験だらけで本当に大変だったけれど、撮影が終わったとき、心には感謝の気持ちだけが残っていたんです。この経験は、自分にとって本当に必要なことだったんだなって、深く思えました。なにかをしている渦中にあるときは、本当に大切なものって見えにくいけれど、一生懸命に向き合っていると、最後には答えが見えることがある。そうすると、すべてが無駄じゃなかったんだって思えます。演じているときのあかりの言葉は、私の実感を通しての言葉でもあるので、少しでもなにかを感じてもらえたら嬉しいです。

(取材・文=松田広宣/写真=石川真魚)

■公開情報
『君のまなざし』
5月20日(土)より全国公開
出演:梅崎快人/水月ゆうこ/大川宏洋/日向丈/長谷川奈央/春宮みずき/合香美希/手塚理美/黒沢年雄(特別出演)/黒田アーサーほか
監督:赤羽博
配給:日活
(C)2017 NEW STAR PRODUCTION

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