なぜ悪いことをしてはいけないか? 地獄絵図の韓国ノワール『アシュラ』が示すシンプルな答え

 お話自体は無茶苦茶ではあるのだが、実力は俳優たちの「悪」に全振りした演技合戦が凄まじいので、最後まで引き込まれてしまう。巨大で血みどろな悪の渦に飲み込まれたような、無力感と絶望感をクタクタになるまで楽しめる。そして劇場を出たときには「よし! 真面目に生きよう! 悪いことはしないでおこう!」とポジティブな気持ちになれること請け合いだ。「悪」が「更なる悪」に食われる様を見て、こういう世界とは出来る限り距離を取るべきだと、逆説的に「善」の大切さを教えてくれる1本である。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『アシュラ』
2017年3月4日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
脚本・監督:キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、チュ・ジフン、クァク・ドウォン、チョン・マンシクほか
配給:CJ Entertainment Japan
R15/133分
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