『豆腐プロレス』AKB48グループの中で誰が一番強い? プロレスとアイドルの関係性を紐解く

 AKB48メンバーがプロレスに挑む新ドラマ『豆腐プロレス』が開始され、大きな話題を呼んでいる。ヤンキー女子高生やキャバクラ嬢など、女の世界の争いを演じてきたAKB48が、今回新たに選んだフィールドが女子プロレスのリング。なぜ今、AKB48がプロレスなのか? アイドルとプロレスの関係や、かつての女子プロレスドラマを通して、『豆腐プロレス』の魅力を考察してみたいと思う。

プロレスとアイドルの関係性

 昨今はプロレスブームが再燃し、“プ女子”なる言葉が生まれるほど女性ファンも増え、若い世代にも身近なものになっている。ここ数年のアイドル戦国時代の中で、プロレスに関わりを持つアイドルも少なくない。最近のエンターテイメント性の高いプロレスとアイドルの相性がとても良いのだ。その相乗効果は今の本格的なプロレスブームとなった一つのきっかけと言えるかも知れない。

 たとえばももいろクローバーZ。決してプロレスで戦うわけではないが、自分たちの成長過程にプロレス的要素をふんだんに取り入れて、プロレス好きの大人たちを虜にしていった。同時に、ももクロファンの若い子たちがプロレスに興味もつ良いきっかけにもなっている。サブカルでアングラな部分がある両ジャンルを、堂々とファンを公言できる位置まで押し上げた功績は大きい。アイドルとの相乗効果で築いてきたプロレスブームは、いまやピークに達しているといっていいだろう。

 そんな中、ついにアイドル界のWWEであるAKBグループが本格参戦したわけだ。『豆腐プロレス』の企画・原作の秋元康曰く、「アイドルは、プロレスである。パフォーマンスの一回、一回が試合のようなものだ。熱狂的なファンは、一試合ごとに勝敗を決める。他の団体とも鎬(しのぎ)を削る。勝つために、肉体を鍛え、過酷な練習に耐える」(引用:公式サイト)とのことで、“アイドル×プロレス”という大型プロジェクトを実現させた。

 単に強さや巧さだけでなく、成長する過程や、不器用だけど一生懸命頑張る姿、そしてお客さんとの近さなど、AKB48がやってきたことはまさに女子プロレスの要素そのもの。大所帯のAKBグループなだけにキャラが豊富で、しかもドラマで多くの人材を一気に使えるという、女子プロレスを演じるにはうってつけの条件が整っている。

 かつて、女子プロブームが巻き起こった80年代中盤、大人気の“全日本女子プロレス”に対抗する団体として“プロレス版おニャン子クラブ”をコンセプトに旗揚げされた“ジャパン女子プロレス”。そのアドバイザーとして秋元氏が関与していた過去がある。後に吉本やホリプロが女子プロレスに関わり、頓挫した歴史がなければ、今頃はAKB48が所属するアイドルプロレス団体を旗揚げしていた可能性もあったかもしれない。

過去の女子プロレスドラマ

 2001年にテレビ朝日で放送された『渋谷系女子プロレス』は、オーディションで選ばれた10代の美少女たちが集まり「渋谷系女子プロレス」の結成からデビュー戦までを描いた物語だ。仲間が集まるまでの人間模様を重点的に描き、ラストの旗揚げ戦でようやく試合が行われた。ディファ有明で全8試合を行う公開収録。レベル自体は決して高くないが、スタントなしで実際に出演者たちが戦うのが話題になった。

 メンバーでCDデビューをし、写真集やDVDを製作するなどメディアミックスの展開をみせた『渋谷系女子プロレス』。オーディション番組から成長過程を見せてデビューさせていくスタイルは、当時全盛期のモーニング娘。を生んだオーディション番組『ASAYAN』(テレビ東京系)を彷彿とさせた。もとより、モーニング娘。が影響を与えた当時のアイドルの形であり、流行とも言える。

 2011年には、TBS系列で放送された『マッスルガール!』とテレビ東京系列の『ここが噂のエル・パラシオ』という2つの女子プロレスドラマが放送された。

 『マッスルガール!』は「イケメン MEETS 女子プロレス」をキャッチコピーに、市川由衣とFTISLANDのボーカリスト、イ・ホンギがW主演した韓流×女子プロレスといった趣向のドラマ。もともとプロレス映画に出るためにレスラーになってしまった志田光や、現在DDTでレスラーとして活躍するモデルの赤井沙希らが出演し、本格的なプロレスシーンを見せている。

 病死した父親に代わり、経営難で解散危機に陥っている弱小女子プロレス団体を、娘が社長になって建て直す模様を描く。この話は、衰退した“錦糸町道場”を運営している元プロレスチャンピオンの父親が急死し、それがきっかけでプロレスの世界に入っていくという『豆腐プロレス』に近い。むしろ、女子プロレスものの定番の設定であると言える。

 一方で『ここが噂のエル・パラシオ』は、佐藤江梨子、愛川ゆず季、武田梨奈、澤山璃奈、中村静香といったグラビアアイドルたちがプロレスをするという実にセクシーなドラマ。加えて、しっかり迫力のあるプロレスをしているのが魅力的だった。2011年は、現役グラビアアイドルの愛川ゆず季が活躍する女子プロレス団体“スターダム”が旗揚げをし、女子プロレスがちょっと脚光を浴びた時代。だからこそ女子プロレスもののドラマが2作も誕生したのだろう。

 ちなみに、愛川ゆず季の成功は後の女子プロレス界に変革をもたらし、“東京女子プロレス”は、アイドルや芸人、声優などが所属する文化系女子プロレスとして人気を博した。主に舞台で活躍する女優によるプロレス団体“Beginning”も誕生し、プロレスラーとタレントの垣根が曖昧な団体も増えているのが、現在の女子プロレス界だ。

 かつては、レスリングシーンは素人なので仕方ないと視聴者は大目に見ていたが、どちらも既に有名なグラビアアイドルやモデルがしっかりとレスリングシーンを見せたことが画期的で、厚い支持を得ていた。こうした流れは、結果的に女子プロレスドラマのハードルを上げたといえよう。

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