2016年アニメ大ヒット現象はなぜ起こった? 豊かなシーンを育んだ“日常系”のリアリティ

映画を中心にヒット作が多数生まれた2016年。だが、アニメは今年になって急におもしろくなったわけではない。

 アニメはもうかなり以前から、現在の水準に達している。今年特に話題を呼んだ映画の監督たち(『君の名は。』の新海誠監督、『聲の形』の山田尚子監督、『この世界の片隅に』の片渕須直監督)にしても、いずれも既に代表作をものにしている中堅以上の監督たちだ。今年に傑作映画が出揃ったのは、極論すれば、めぐり合わせ以上のものはないのだ。今のアニメ・シーンの豊かさからすれば、こうした作品がどこかのタイミングで生まれるのは十分ありうることだ。

 そもそも、日本のアニメは、「キャラクターの存在感」と「観客をその場面に立ち会わせるような演出」を大事にして進化してきた。この2つをまとめていうと「もっともらしさ(リアリティ)」となる。

 リアリティの追求はおよそ40年ほど前に本格的に始まった。そして、高い精度のレイアウトに裏打ちされた、現実模倣的な画作りが本格化したのが1990年代後半。さらに2000年代に入って、俗に“日常系”と呼ばれる、女性キャラ中心の他愛もない日常を描くコメディが題材となることで、「現代日本の生活をリアリティをもって描く」ことが自然な出来事になった。大雑把にいうとこのような歴史の中で、さまざまな絵柄の様式、演出のスタイルが挑戦され、それが現代のアニメの豊かさを支えるようになったのだ。そして『君の名は。』『聲の形』『この世界の片隅に』はこの豊かさの成果のひとつとして生まれた。

 だからこの3作以外に目を向けても、見ごたえのある作品はとても多い。

 映画をみると、高いテンションで観客を圧倒した『KING OF PRISM by PrettyRhythm』(菱田正和監督)、繊細な青春もの『同級生』(中村章子監督)これがメジャーだといわんばかりのサービス精神に溢れた『名探偵コナン 純黒の悪夢』(静野孔文監督)などがある。TVに目を転じても同様で、オリジナル企画にだけ絞っても、若者の挫折とリベンジを愚直に描いた『甲鉄城のカバネリ』(荒木哲郎監督)、ブラウン管の中の人気者たちを現実の歴史と重ね合わせて描く『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜THE LAST SONG』(水島精二監督)、フィギュアスケートを正面から題材とした『ユーリ!!!onICE』(山本沙代監督)といったバラエティに富んだ作品が並んだ。原作付きの作品まで含めれば、こうした作品はさらに増える。

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