『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』にも匹敵! 『アンフレンデッド』の革新的方法論に迫る

 しかし、同じような作り方をしていると言っても、『ブラック・ハッカー』ではPC画面の中で劇中に必要な情報にクローズアップしたり移動したりと、どうしても映画としての観やすさに気を遣っている印象を受けた。ただPCの前からだけで物語を進めれば良いものの、主人公もPCを連れて車を運転したりと、空間の移動も著しい。それはホラー映画とスリラー映画の違いであるのかもしれないが、閉塞的な状況がもたらす緊迫感は欠けてしまう。

 その点で、『アンフレンデッド』は潔く画面を動かさない。常にあらゆるウインドウが開き続けた画面全体を映し、カメラが寄る代わりにウインドウを拡大させる。映画の舞台となるPC画面上の機能を活用しているのだ。しかも、冒頭のユニバーサルのロゴから、ネット回線が重くなって動画が乱れるという不気味さを随所に混ぜていくという特殊な演出を見せる。

 そして登場人物たち、彼らの多くはポータブルなラップトップを使っているようだが、その内蔵カメラが映し出すのは彼らの表情だけで、常にPCの前から動くことはない。恐怖対象がパソコンの中にしか存在していないために、彼らの“自分を画面に映したい”という欲求以外のものを観客は与えられず、撮る者の歪んだ好奇心という、この映画の主題が半ば強制的に反映される。しかも、メインのPC画面上も完全にフィックスされていることで、主人公の好奇心に従わざるを得なくなる。何が拡大され、何を観るのかという選択肢がキャラクターに任されることで、閉塞的な空間を自然と作り出すことができたのだ。この点では、POV方式と同じ方法論だ。

 これだけ考え抜かれた作品でも、どうも野暮なことが気になってしまう。PCの画面は16:9(1.78:1)のHD画面なのだが、この映画がそれよりも若干横に長い、通常のアメリカンビスタ(1.85:1)で作られているということだ。どうせなら徹底的なPC画面サイズで作り出して欲しかったと思ってしまうのだが、あのラストカットのためだとしたら、否が応でも納得できる。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『アンフレンデッド』
7月30日(土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋HUMAXシネマズほかにて公開
監督:レヴァン・ガブリアゼ
脚本:キール・キムジー
製作:ジェイソン・ブラム
出演:シェリー・ヘニング、レニー・オルステッド、ウィル・ベイツほか
配給:ミッドシップ
2015/アメリカ/83分/ビスタ/原題:Unfriended 
(c)2016 Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:unfriended.jp

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