成馬零一の直球ドラマ評論『とと姉ちゃん』十四週目

『とと姉ちゃん』いよいよ出版社立ち上げへーー弱肉強食の戦後社会で女たちはどう戦う?

 甲東出版を退社した常子は、鞠子と美子(杉咲花)と共にKT出版を立ち上げる。売り出す雑誌は「スタアの装い」。美子が闇市で見かけた外国人女性のオシャレな服装をイラストに起こし、鞠子が解説の記事を書く。

 そして常子が編集長として全体を見て、鉄郎が紙の調達を行った。雑誌ができあがっていく過程を見せていく姿は、共同作業でモノを作ることの楽しさが溢れており、今まで積み重ねてきた小橋家の物語がいよいよ出版へとつながっていく。

 とはいえ、歯磨き粉を作った時もそうだったが、小橋家の事業は、最初はうまくいくのだが、必ずトラブルが待ち構えている。今回は最初に刷った雑誌は一日で完売したものの、模倣した雑誌が大量に出回り「スタアの装い」よりも安い価格で売り出されたことで、増刷した雑誌は大量に売れ残ってしまう。また、紙質の悪い仙花紙を使ったことが悪評を呼んでしまい、はやくもKT出版は経営危機に。

 そして鉄郎も、進駐軍から横流し品のジーンズを売るという事業が失敗し、新たなビジネスをはじめるため舞鶴に向かう。鉄郎は集めた準備金を常子に貸したままにして「諦めねぇで、もう一度(雑誌を)出せ」と言って家を出る。残された資金を元に常子は、次の雑誌の出版を計画し、甲東出版に相談に行く。そこで五反田一郎(及川光博)から、かつて内務省で会った花山伊佐次(唐沢寿明)を紹介される。

 来週は、今まで明かされてこなかった花山の過去が明らかとなる。いよいよ常子と花山の物語が本格的にスタートするのだ。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
『とと姉ちゃん』
平成28年4月4日(月)〜10月1日(土)全156回(予定)
【NHK総合】(月〜土)午前8時〜8時15分
[再]午後0時45分〜1時ほか
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/totone-chan/

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