成馬零一の直球ドラマ評論『ゆとりですがなにか』
『ゆとりですがなにか』第三話で見えてきた、クドカンドラマのルール
坂間正和(岡田将生)は、山岸ひろむ(太賀)から、パワハラで訴えられそうになるが、なんとか示談となり坂間は一週間の謹慎処分で済んだ。辞めると言った山岸は職場に復帰。パワハラが認定されていたら、坂間は元の部署に戻れなかったため、最悪の事態は回避できたのだが、会社と山岸とのわだかまりは残ったままだった。
一方、山路一豊(松坂桃李)は教育実習生の坂倉悦子(吉岡里帆)から、生徒の一人が、いじめられているのではないかと相談される。いじめは悦子の勘違いで、事態は事なきを得たが、対応が遅かった山路は他の教員から「鳥の民」で責められる。そこに道下まりぶ(柳楽優弥)が乱入したことで、事態はめちゃくちゃに。山路は「いい教師じゃなくていいから、いい人間になってください」と悦子に説教。「初めて叱られたような気がします」と悦子は感謝して、二人の仲は急接近する。しかし後日、山路の元に、若い男が殴りこんでくる。男は悦子の彼女だと名乗り、山路に詰め寄る。
一気にドラマらしくなった『ゆとりですがなにか』第三話。緊迫感が続いた先週までに較べて見やすくなったのは、宮藤官九郎が得意とするチンピラ系のまりぶが坂間たちと馴染むようになったからだろう。男三人に、坂間の彼女にして上司の宮下茜(安藤サクラ)、山路に気がある悦子、そして、まりぶが気になっている坂間の妹・ゆとり(島崎遥香)が絡むようになる後半は、男3人×女3人の群像劇という『男女七人秋物語』(TBS系)以降のトレンディドラマのようである。山路と茜がロッククライミング施設で再会して男女の友情が芽生えるのも、実にドラマらしい展開だ。しかも終盤には温泉に浸かる女3人のサービスカットまで登場と、見どころが満載だった。
まりぶのことを友達じゃない、友達はもっと気を使うものだ、と言う坂間と山路に対して、まりぶは思ったことをズバズバといい「友達じゃないから、言いたいこと言っただけ~」と返すが、遠回しに坂間を励ましているのがわかる。ゆとり第一世代という共通項以外はまったく生活環境や考え方の違う三人がつるんでいる姿はとても魅力的。レンタルおじさん・麻生巌(吉田鋼太郎)との関係もそうだが、単純な言葉に還元できない、なんとなくつるむようになった人間関係を描かせたらクドカンの右に出るものはいないだろう。
もう一点、見やすくなったのは、作品内のルールが見えてきたからだろう。例えば、『タイガー&ドラゴン』(TBS系)なら落語の演目と物語がリンクしたり、『うぬぼれ刑事』(TBS系)なら、毎回主人公の刑事が好きになった女が犯人だという感じで、クドカンドラマでは、作品内のルールが一話で明示され、そのルールに沿って物語が続いていく。そのため、第一話はルールの説明に費やし、二話以降はそのルールがパターン化することで一話完結のドラマとして楽しむことができる。そのような物語上のパターンが二話までは見えなかったが、ゆとり第一世代の坂間たちがゆとり世代の後輩に説教をして一度は感謝されるが、後でとんでもない事態になるという展開が、今後のパターンになりそうだ。