『テラフォーマーズ』は三池監督流の“時代劇”? 作詞家zoppが異色ヒーロー作品の魅力に迫る 

 三池崇史監督が手がける映画『テラフォーマーズ』は、日本的な美意識を強く打ち出した異色の娯楽作品だ。

 本作は漫画原作の映画である。漫画原作の映画は小説原作のそれに比べて、視聴者の見る目がより厳しい傾向がある。活字だけならば各自が様々な想像をふくらませることができるが、漫画はイラストがあるので、ビジュアル面への解釈が限定された中で映画を審判するからだ。そういう意味では、本作は充分に鑑賞に耐える作品といえよう。

 昨今、ハリウッドではヒーロー漫画原作映画の人気が群を抜いている。その代表格がMARVELコミック、そしてDCコミックだ。MARVELといえばアベンジャーズシリーズ。2012年に公開された『アベンジャーズ』は15億1956万ドルで世界歴代映画興行収入5位。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』も14億504万ドルで7位になり、一気にドル箱コンテンツになった。一方、DCコミックも負けていない。今年公開された『バットマンvsスーパーマン』はオープニングの三日間で全世界興行収入は4億2410万ドルを突破し、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』を上回る勢いとなった。

 

 『テラフォーマーズ』もいわゆるヒーローもので、原作は1,600万部を超える人気漫画だ。原作を読んだ三池監督は、この物語に時代劇的な魅力を感じたという。火星に送ったゴキブリが超絶な進化を遂げて最強生物になる。その生物にチームで立ち向かうという構図は、確かに『七人の侍』を彷彿とさせる。だが、登場人物の恰好を見ると、時代劇というよりはスーパー戦隊に近いように思えた。だが、今作はそんなヒーローたちが、最強生物たちによって、ときに呆気なく、ときに無残に殺されてしまう。本来ならば、戦隊ヒーローはこんな形で命を落とさない。そうなのだ。三池監督がいう“時代劇感”というのは、彼らの死に様を指しているのだろう。そして、この焦燥感や悲壮感にこそ、日本的な美意識が現れているのかもしれない。「日本映画なのだから日本らしさを伝えるべきだ」と三池監督も言っているように、この映画からは安易にハリウッドの真似事はしない、との意思が感じられるのだ。

 さらに本作では、タランティーノ監督を思わせるオマージュが見どころである。ところどころで三池監督が影響を受けたであろう、映画やギャグを再現しているのだ。どのシーンでなにをオマージュしたものなのかチェックするのは、この映画の隠れた醍醐味と言える。思わず笑ってしまうようなシーンもあるのでご注意いただきたい。

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