姫乃たまのウワサの濡れ場評006『LOVE 3D』

芸術と猥雑の間にある、窒息するほどの“性“ーー姫乃たまが『LOVE【3D】』を観て考えたこと

 ところで私は、猥褻な映像であるアダルトビデオの名作を、面白くて官能的な作品だと思っています。面白さと、実用度は、なかなかにバランスを取るのが難しいです。実用度の高い優れたアダルトビデオは面白みに欠けやすく、逆に、セックスシーンさえ収録していれば後は何をしても良しという作品は面白いですが、実用度が足らないこともしばしばです。

 面白い作品の実用度が足りないのは、セックスシーンの尺が短いせいではなく、冷静な目で客観視すると、セックスが滑稽であることを思い出してしまうからでしょう。しかし、そのハードルを飛び越えた、面白くて官能的な作品は、目的を終えても胸に残る名作となります。

 同じように、恋愛映画からあからさまなセックスシーンが省かれるのは、恋愛という高尚で純粋な行為の動機が、人間本来の野蛮な欲を孕んでいることを思い出してしまうからでしょう。イラン人の男性から、友人とのセックスの話をされた時の私みたいに。

 面白さと実用度を両立させたアダルトビデオが名作であるように、両立させづらい、芸術と猥褻の間を切り取った今作を名作だと思います。少なくとも、ここ数年、月に何十時間も他人のセックスを見続けても気が付かなかったことに、三秒で気が付かせてくれるくらいには強烈に力を持った作品だったのです。

***

 友人は席に戻ってくるなり、余計な話をしたイラン人の恋人と、私の目の前で大喧嘩になり、まもなくふたりは破局しました。ふたりは窒息しそうなくらい愛し合っていたし、束縛し合っていて、私と初めて会った日、ふたりの関係はすでに窒息状態でした。

 

 セックスもドラッグも突き抜けるような快感がありますが、どちらも行なわれるのは密室ばかりです。『LOVE 3D』で唯一奥行きがあったシーンは、マーフィーとエレクトラが初めて出会ったシーンのみです。風が吹き抜ける桟橋の上で彼らはキスをして、室内でセックスをして、呼吸の出来ないシャワーの下で抱き合います。そうやって愛し合って、束縛し合って、窒息状態になって、大雨と嵐のような喧嘩を繰り返して、呼吸をするためにまたドラッグをやってセックスをするのです。


■姫乃たま(ひめの たま)
地下アイドル/ライター。1993年2月12日、下北沢生まれ、エロ本育ち。アイドルファンよりも、生きるのが苦手な人へ向けて活動している、地下アイドル界の隙間産業。16才よりフリーランスで開始した地下アイドルを経て、ライター業を開始。アイドルとアダルトを中心に、幅広い分野を手掛ける。以降、地下アイドルとしてのライブ活動を中心に、文章を書きながら、モデル、DJ、司会などを30点くらいでこなす。ゆるく、ながく、推されることを望んでいる。

[HP] http://himeeeno.wix.com/tama
[ブログ]姫乃たまのあしたまにゃーな 
http://ameblo.jp/love-himeno/
Twitter https://twitter.com/Himeeeno

 

■公開情報
『LOVE【3D】』
2016年4月1日(金)新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
監督・脚本・編集・製作:ギャスパー・ノエ
撮影:ブノア・デビエ
音楽:ケン・ヤスモト
VFX:ロドルフ・シャブリエ、マック・ガフ・リーニュ社
出演:カール・グルスマン、アオミ・ムヨック、クララ・クリスティン
配給:コムストック・グループ
配給協力:クロックワークス
2015年フランス・ベルギー合作/英語/スコープ/135分/R18 
(c)2015 LES CINEMAS DE LA ZONE . RECTANGLE PRODUCTIONS . WILD BUNCH . RT FEATURES .  SCOPE PICTURES .

関連記事