Q・タランティーノが、50年前の撮影方式で最新作『ヘイトフル・エイト』を撮った理由

 全米各地で70mmロードショー・バージョンを限定公開する事を発表し、その上映に際して引退したベテランの映写技師を派遣し、フィルム上映という技術を後世に伝えるというタランティーノらしい映画愛が注がれた本作だが、そんな彼にも一つだけ誤算があった。アメリカ国内に現存する2館のシネラマの映画館、シネラマ・ドーム・シアターとシアトル・シネラマ・シアターが、『ヘイトフル・エイト』を上映せず、クリスマスは『スター・ウォーズ フォースの覚醒』を上映することを発表してしまう。この事実を知ったタランテイーノは激怒し、配給のディズニーに対して契約が反故にされたとラジオで抗議の声明を発表する。この件に関してディズニー、ワインスタイン・カンパニー共に公式見解を発表していないが、永遠の映画マニアであるタランティーノにとって聖地ともいえるシネラマ・ドーム・シアターで、自作のシネラマ上映が出来なかった事は悔やんでも悔やみきれないことだろう。余談だが『ヘイトフル・エイト』の70mmロードショー・バージョンのシネラマスクリーンでの上映は、小規模ながらドイツのカールスルーエにある老舗の映画館Schauburgで実現している。

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 残念な事に日本ではこのフィルム・バージョンの上映は予定されていないようだが、タランティーノがLAに所有している映画館ニュー・ビバリー・シネマでは、35mm版によるロードショー・バージョンが上映されている。70mmとは言わない、せめてこの35mmバージョンを日本の映画館で観ることができたら……いや、贅沢は言うまい。スクリーンで『ヘイトフル・エイト』を観られるだけで十分幸せなのだ。

■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。

■公開情報
『ヘイトフル・エイト』
2月27日(土)全国公開
監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
音楽:エンニオ・モリコーネ 
美術:種田陽平
出演:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンス、デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセンandブルース・ダーン 
配給:ギャガ
原題:The Hateful Eight/2015/アメリカ映画/168分
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公式サイト:http://gaga.ne.jp/hateful8/top/index.html

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