『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』ラミン・バーラニ監督インタビュー

『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』監督が語る、 世界の富を独占する“1%の悪魔たち”と戦う方法

「トランプにも観てほしいけど、彼はきっと新しい詐欺の方法を思いつくだけだろう」

ラミン・バーラニ監督 (c)2014 99 Homes Productions LLC All Rights Reserved

——その社会を変えていくためには、何が一番必要だと思いますか?

バーラニ:ふーっ(深いため息)。そこが難しいところなんだよね。僕にできるのは映画を作ることだけで、映画で今の世界において何が起こっているかを人々に観てもらうことしかできない。僕自身、このテーマで今回作品を撮ろうと思って現地にリサーチに行ったわけだけど、実際にリサーチするまではここまでひどいことが起きているなんて知らなかった。特に自分がショックを受けたのは、作中でも描いているけれど、この住宅問題を扱う際の法廷の風景だった。ほとんどの判決は自動的に60秒以内に下されていく。なにしろ、この問題で投獄された人間は一人もいないんだ……。でも、こうやって今ここで君とこの作品について会話をしているように、映画を作ることで、そこに会話が生まれる。会話、会話、会話。とにかく僕にできることは問題についての会話を生み出すことで、その会話が世の中を少しでもいい方向に変えるきっかけになることを願うだけだよ。

——本作が描かれた世界から、現実では5~6年の時間が経っています。状況は改善しているのでしょうか?

バーラニ:改善しているとは言い難いね。相変わらず司法は不動産ブローカーを野放しにしたままだ。それに、ふーっ(深いため息)、今のアメリカではドナルド・トランプのような人間が台頭してきている。僕は、彼にこの作品を観てほしいと思っている。でも、きっと彼のような人間は、この作品を観ても心を痛めるどころか、新しい詐欺の方法を思いつくだけだろうね(苦笑)。

『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』 (c)2014 99 Homes Productions LLC All Rights Reserved

——(苦笑)。アンドリュー・ガーフィールドは言うまでもなく『スパイダーマン』のピーター・パーカーであり、マイケル・シャノンは『マン・オブ・スティール』のゾッド将軍です。彼らのようなトップ・アクターが、このような社会性の強い作品に出ることはとても意味があることだと思いますが、あなたはエンターテインメント作品と社会派作品の境目をどのようにとらえていますか?

バーラニ:僕にとってその作品がエンターテインメント作品であるか社会派作品であるかというのはまったくどうでもいいことで、関心があるのはグッとくるストーリーがあるかどうか。それだけなんだ。そして、一番興味があるのは、これまで映画が描いたことのない世界を描きたいということ。今回の作品は、まさにそういう作品になったと思う。……それと正直に言うと、僕はアンドリューが演じた『スパイダーマン』シリーズを一本も観てないんだ。

『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』 (c)2014 99 Homes Productions LLC All Rights Reserved

——本当に!? それでキャスティングしたんですか!?

バーラニ:主人公がマントをつけて高層ビルの間を飛び回っているようなバカバカしい映画には興味がないんだ。

——(「スパイダーマンはマントをつけてないのに」と思いながら)はい(苦笑)。

バーラニ:アンドリューをキャスティングしたのは、彼が主演していたブロードウェイの舞台『セールスマンの死』に深く感銘を受けたからなんだ。そして、彼は『スパイダーマン』よりももっと“意味のある”作品に出ることを強く望んでいた。それに、『スパイダーマン』を観なくても、アンドリューがとても優れた役者であることはわかるよ。いや、観ないほうが、よりわかるかもしれない(笑)。

(取材・文=宇野維正)

『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』予告編

■公開情報
『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』
2016年1月30日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督:ラミン・バーラニ
脚本:ラミン・バーラニ、アミール・ナデリ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、マイケル・シャノン、ローラ・ダーン
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム 
(c)2014 99 Homes Productions LLC All Rights Reserved
公式サイト:dreamhome99-movie.com

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