アイドルとJホラーの“密接な関係”はどう変化してきた? 70年代〜10年代の潮流を考察

 少女らが次々に食われてしまう点も共通しており、これらフリーゲーム原作ホラーは図らずもアイドルホラーの系譜を正当に受け継いでしまっているかもしれない。ちなみに1月30日に公開された水谷果穂主演『バレンタインナイトメア』(今野恭成監督)はかつて自殺した少女が蘇って高校生らを次々と襲っていくものだが、そこに青春劇とラブストーリーがうまく絡まっており、フリーゲーム原作の系列が徐々に成長していることの証明とも言える作品だ。今後このラインからどのようなものが生まれてくるのか、決して無視できない。

 他にも現在のアイドルホラーには、作家性の強い監督と個性的なインディーズアイドルがコラボレートしたものがある。たとえばデビュー長編『クソすばらしいこの世界』が話題になった朝倉加葉子が監督し「ゆるめるモ!」主演の『女の子よ死体と踊れ』もそれだ。こちらの類もジャンルの枠をはみ出した突然変異的なものができる可能性を秘めている。

 こうした状況下、アイドルや原作の人気にあやかり続ける業界への批判は常にある。実際、本来ホラー映画にあるべき恐怖への探究心を完全に忘れ、ただ安く早く売るためにアイドルとホラーが利用されていることも多々ある。しかしアイドルの力を借りて大胆に冒険する新たなホラー映画が生まれることにも希望を抱きたい。

■嶋田 一
映画ライター。87年生まれ。精力的に執筆活動中。

■公開情報
『バレンタインナイトメア』
公開中
監督:今野恭成
原作:IVORY DICE
脚本:今野恭成
撮影:今野恭成
照明:稲葉俊充
出演者:水谷果穂、芋生悠、宮城孔明、櫻井圭佑、熊谷魁人
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