有村架純と高畑充希は『いつ恋』でライバルに? ヒロインたちの演技とポテンシャルを検証

 一昨年の1月クールに放映された『失恋ショコラティエ』、昨年の4月クールに放映された『ようこそ、我が家へ』に続いて、本作『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(略して『いつ恋』)で3年連続となる月9ドラマへの出演を果たした有村架純。しかも今回は遂に主演ロールを張り、月9ヒロインの仲間入りを果たしただけでなく、『同・級・生』の安田成美や『東京ラブストーリー』の鈴木保奈美と同じ、坂元裕二脚本による月9ヒロインとして、大女優への道が開かれたと言ってもいい。

 ちょうどその第1話が放映されるのと同じ日には、第39回日本アカデミー賞の優秀賞が発表され、『映画ビリギャル』を対象作にして、主演女優賞と新人俳優賞を受賞。すでに多くの映画やドラマで主演を張っていることを考えると、「新人」なのかどうかは少し疑問が残るが、まさに若手女優の中で名実共に一歩抜きん出ていることを証明した。さらに一昨年声優を務めた『思い出のマーニー』がアメリカのアカデミー賞の長編アニメーション映画賞候補にもあがり(英語版で声優を務めたのは『マッドメン』シリーズのキーナン・シプカだったが)、2016年の幕開けは有村架純の話題で埋め尽くされているのだ。

 今回彼女が務める役は、幼い頃に母親を亡くし、北海道の養父母の元で育ち、クリーニング店で働きながら牧場主との結婚を控える20代前半の女性だ。第1話では、高良健吾演じる東京の運送会社の男とひょんなことから出会い、自分の置かれている状況に悩みながら、町を出る決意を固め、上京していくまでを描いているのである。

 興味深いのは有村架純演じる杉原音というヒロインが、10年以上は北海道に住んでいるはずなのにもかかわらず、子供の頃に染み付いた関西弁が抜け切れていないということだ。他にも高良健吾演じる練に突然飴を渡したり、大雨の降る中「雨と雨の間走って通れるから」と傘もささず走り出したり、どことなく関西人気質な大らかさを感じさせる演出がなされており、いかに彼女がこの北の町の人々と距離を置いて生きてきたのかがわかる。

 そもそも有村架純は兵庫県出身なので、同じフラーム所属の戸田恵梨香とは同郷なのである(戸田は神戸で、有村は伊丹市ではあるが)。あまりこれまで彼女が演じてきた役どころで目立って関西弁を話しているイメージはないものの、コテコテの名古屋弁を喋っていた『映画ビリギャル』に比べると、まったく違和感がない。第2話から始まる、東京を舞台にしたメインストーリーの中で、彼女が徐々に標準語にシフトしていく演出がなされれば、東京で出会う人々へ心を許していく過程を示すだけでなく、如何にして東京に染まっていくのかがわかるポイントなのではないだろうか。

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