高根順次「映画業界のキーマン直撃!!」Part.02

「インディーズは常に死と隣り合わせ(笑)」SPOTTED PRODUCTIONS直井卓俊氏に訊く

「正攻法だとできないことをやるのが、インディーズの強み」

ーーその後はなにを?

直井:アップリンクを辞めたあとは、基本的にはフリーだったんですけど、当時バイオタイドという会社にデスクを借りていて。山下敦弘さんが監督を務めた劇場版の『くりいむレモン』とかーーその後シリーズになってVシネになるんですけどーーその制作などをやっていた会社でした。ピンク映画の特集上映「R18 LOVE CINEMA SHOWCASE」というのをポレポレ東中野で何度かやらせてもらって。同じ頃に「ガンダーラ映画祭」で観た『童貞。をプロデュース』に惚れ込んで、松江哲明監督と話して、翌年の「ガンダーラ映画祭」のための同作品のPART2の制作を手伝った流れで、自分が配給する事になりました。それは自分の貯金だけで強引に立て替えて、配給したんですけれど、それで、配給名義が個人の名前ではダメだろうと思ったんです。で、その頃に親しかった継田淳監督が、当時撮った短編映画の頭につけていた屋号の「SPOTTED PRODUCTION」という名前を借りて、以後、引っ込み付かなくなるという(笑)。

ーーその延長線上で、『片腕マシンガール』も配給されたと。

直井:『片腕マシンガール』はFever Dreams. LLCというアメリカの会社と日活の合作で、日本の映倫規定ではできないスプラッター描写をやって、それを逆輸入するという企画だったんですけれど、内容がハードコアすぎるということでなかなか日本公開は実現できてなかったんです。井口監督とは懇意にしていたこともあり、何より映画が素晴らしかったので勿体ない!と思って、思い切って手を挙げてみたんです。それで当時は個人なのに日活から予算を預かって配給するという状況になりました。結局、ピンク映画関連で繋がっていたインターフィルムというDVDメーカーが間に入ってくれて、なんとか乗り越えたんですが、いざ予算を預かってやるとこれは責任重大で、本当に大変でした……。地方上映に行って舞台挨拶とかも全部立ち会ったのは、この映画が初めてでしたね。

ーーすごく高評価だったのを覚えています。海外でもかなり売れましたよね。

直井:もともと海外がメインの企画ですね。井口昇監督はそこから続々キャリアを重ねて和製エクスプロイテーション系作品の第一人者的な存在になったんじゃないかと。『童貞。をプロデュース』と『片腕マシンガール』が、僕にとっても転機になった感じです。それがある程度は結果がうまくいったことで、じゃあ続けてみようかということになりました。もちろん、そのあとは山あり谷ありなんですけど。

ーー配給のイロハも分からない状態から始めたということですね。

直井:本当になにもわからなかったです。でも、上映でお世話になったシネマ・ロサや、ポレポレ東中野などの方々が、ものすごく親身になっていろんなことを教えてくれて、なんとか形になっていきました。地方だと木下さん(現:東風)という人が当時バイオタイドの宣伝部のボスで、その人が『童貞。をプロデュース』を地方で上映してくれるところを探してくれたり、あと当時インディーズ映画界で頭角を現していた前田弘二監督が、名古屋シネマスコーレの坪井さんというスタッフを紹介してくれたり。本当にいろんな人の繋がりでコネクションが出来ていったという感じです。

ーーその後、SPOTTED PRODUCTIONSを法人化した。

直井:2009年に、入江悠監督の『SR サイタマノラッパー』と松江哲明監督が撮影した前野健太主演のドキュメンタリー映画『ライブテープ』を配給したんですけれど、結果は出せたものの、何かもう個人で配給・宣伝で関わるのは限界だと思ったんですよね。予算の立て替えも本当に厳しくて(笑)。スポンサーなしで意地張ってやってもしょうがないって思いました。その頃、先輩たちの勧めもあり法人化して、第1弾企画として『劇場版 神聖かまってちゃん』を立ち上げて、共闘してくれる人を探そうとポレポレ東中野の大槻貴宏さんとかと一緒にやっていたら、その企画を面白いという人たちが集まって製作委員会になっていって。

ーー『SR サイタマノラッパー』って、ゆうばりファンタスティック国際映画祭でグランプリでしたよね。

直井:はい。グランプリを獲って、その翌月に公開だったので、出来過ぎの展開でした。シネマ・ロサの客入りはまぁまぁという感じだったんですけれど、ユーロスペースにムーブオーバーしたら爆発したんですよね。いとうせいこうさんがブログで絶賛してくれて、すごく話題になったんです。ただパート2は製作委員会になって、僕は気がつけばほぼボランティアという感じの関わり方で、シネコンでの上映の行方を間近で見守ることになったんです。いろいろ洗礼を浴びる形になったと思うんですけれど、でも、そのぶんシステムに挑戦した最初のインディーズ映画でもあった気がするんですけど。

ーーその経験で得たものはありますか?

直井:やはりレイトショー1回などの少ないコマを如何に溢れさせて話題にしていくか、熱を伝えていくか、っていうことの大切さを再認識したというか。作品の規模が大きくないことのメリットも見えてきましたし。フットワークの軽さとか、臨機応変な対応とか。

ーーもっと大きい規模の映画を撮ろうとか、メジャーな映画会社に入ろうとかいう気持ちはないのですか?

直井:向いてないのでやりません。大きい規模の作品は、いろんな調整事が多すぎますからね。僕はそうゆうの向いてないんです(笑)。

「若い世代は映画文化の捉え方自体が変わっている」

ーーNetflixやHuluといった配信サービスについてはどう考えていますか?

直井:1年くらい前から各社から相談を受けているものの、まだ話はまとまっていません。ウチの場合は、制作費がマックスでも2000万円で、ほとんどは数百万円で作っているんですけれど、単館で上映して、うまくいけばソフト化するという流れで、いまのところはきちんと回収できているので、まだタイミングではないのかもしれません。そもそも、まだ配信サービスって根付いていないですよね。たぶん、いま配信してもあまりうまく行く気がしないので、それならミニシアターでかけたほうが収益は上がると考えています。実際、ウチの場合はレンタル店で出してみても、ビジネス的なメリットはあまりないんですよ。アメリカとか韓国みたいになっていれば、また話は別なのでしょうけれど。

ーー韓国などでは配信サービスがすっかり浸透して、もう本当にレンタルビデオ店が立ち行かなくなっているようです。

直井:配信を売るために劇場公開する、みたいな逆転現象まで起こっているみたいですね。日本でも若い世代だと、配信サービスなどに慣れているからか、映画文化の捉え方自体が変わっている印象を受けます。そういう世代にしてみれば、映画館というのは特にこだわるフィールドではないのかもしれないです。

ーー劇場で放映しないで、Netflix放映だけでも良いという感覚でしょうか?

直井:どうなんでしょうね。でも映画は映画館で、というのはずっとある気がしますけどね。ただ、最近はチラシを観て劇場に行くということはあまりないでしょうし、やはり若い世代が映画館から離れているのは事実だと思います。しかし、我々の世代だと早くても大学生くらいで作品を撮っていたのが、いまは機材も安価かつ高品質になったことで、今年のMOOSIC LABに参加する松本花奈監督のように高校生でも長編を作ってしまうわけで、そういう部分の進化は本当にすごいですよ。

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