ドラマ版『釣りバカ日誌』、なぜ若き日のハマちゃんを描く? テレ東・金曜8時枠の特殊性

 『釣りバカ日誌』と言えば、原作:やまさき十三、作画:北見けんいちによる人気漫画を西田敏行主演で松竹が映画化した人気シリーズ。ゼネコン会社・鈴木建設の営業課に勤めるハマちゃんこと浜崎伝助は、仕事はできない万年ヒラ社員だが釣りの腕だけは天下一品の自他ともに認める「釣りバカ」だ。一方、ハマちゃんと仲良しの釣り仲間のスーさんこと鈴木一之助は、実はハマちゃんが務める鈴木建設の社長。本作は、ハマちゃんとスーさんという「釣り」でつながった年の離れた男同士の友情を描いた人情喜劇だ。

 『釣りバカ日誌』は、『男はつらいよ』シリーズと並ぶ人気シリーズだったが、第22作目となる『釣りバカ日誌20 ファイナル』で2009年に完結している。スーさんを演じた三國連太郎が2013年に亡くなったこともあり、二度と新作が作られることはないかと思われていたが、今回、ハマちゃんの新入社員時代を描いた『釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~』がテレビドラマで作られることとなった。新しく若き日のハマちゃんを演じるのは濱田岳。そして、スーさんを演じるのは、映画でハマちゃんを演じていた西田敏行である。

 物語の舞台は2015年の現在。新入社員のハマちゃんは釣り堀で自分の会社の社長と知らないまま、スーさんと仲良くなり釣りに行くことになる。第1話から第3話までは、ハマちゃんはスーさんの正体に気づかずに、先にスーさんが自分の会社の新入社員だと気づいてしまう。自分の立場を考えて、何度もハマちゃんと距離を取ろうとするのだが、年をとって知った釣りの楽しさとハマちゃんの人懐っこしさもあって、中々離れることができない。そして、第3話のラストで、ついにスーさんの正体がハマちゃんに知られてしまう。このあたりの関係性が出来上がっていく様は連続ドラマならではの面白さがある。

 また、ハマちゃんが若者となったことで、スーさんの中にある社長の孤独がより強調されている。物語自体が地位も名誉もあるが、孤独なスーさんは、社会的地位とは関係なく釣りという趣味を通じて知り合った、親友のハマちゃんのことを、いつも気にしている。西田が演じるスーさんは年齢や本人の資質もあってか、まだ男としてギラギラしている。社長として会社の会議で部下に当たる部分の言い回しなど、嫌味ったらしくねちねちとしていて、はっきり言って嫌な奴だ。しかしそれは、社長として振る舞う以上、弱みを見せられないからである。だからこそ、自分の弱い部分を素直に出せるハマちゃんの前ではデレデレと甘えたり、逆に子どもっぽくいじけてケンカもできてしまう。そんなスーさんに対して、釣りバカとして今までと同じように接するハマちゃんの素直な明るさが実にチャーミングで、二人のやりとりを見ているだけで微笑ましい気持ちになれる。

 後にハマちゃんの奥さんとなる小林みち子(広瀬アリス)とのケンカしながらもどこか楽しそうなやりとりも素晴らしい。近年は学生役から大人の働く女性を演じるようになってきたが、ついに当たり役を引いたなと、ファンとしてはうれしく思う。

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