女優・波瑠は『あさが来た』でブレイクなるか? “没個性という個性”の可能性を読む

 NHK朝の連続テレビ小説のヒロインは、若手女優の登竜門と言われ続けている。ドラマ低迷期と言われる昨今においても、安定して平均20%前後の視聴率を確保するだけあって、そこに毎朝主人公として映るということがどれほど大きなことか。ましてや、実力のあるスタッフや大御所キャストの中で半年間撮影を続けていくだけでも、女優として大きな一歩となる。

 しかし、ここ10年間で作られた20本の作品の中で、オーディションを介さずにヒロインを務めた宮崎あおいや堀北真希、吉高由里子ら、すでにある程度の知名度を獲得していた女優と比べると、オーディションから選ばれたヒロインで間違いなくブレイクしたと言えるのは榮倉奈々と多部未華子、そして能年玲奈ぐらいであろうか。少なからず知名度は上がるものの、ブレイクと呼ぶにはどうも不完全燃焼なイメージが先行している。

 10月からスタートした『あさが来た』のヒロインに選ばれたのは現在24歳の女優、波瑠。芸能界のキャリアはすでに10年近くあり、ドラマやCMなどで頻繁に見かける女優ではあるが、今回はオーディションで主演を勝ち取った。応募者が過去最多の2590人という中から選ばれただけに、彼女に対する期待の大きさが伺えるのである。とはいえ、彼女の出演作を思い返してみてもこれといって掴みどころのないものばかりで、どうにも不思議な女優である。これまでの彼女の代表作を問われても、これといって思い当たる節も無いのである。

 出世作、と呼んでいいのだろうか。彼女の存在を認識した作品といえば、3年前のdocomoのCMであろう。仕事でドジをしたり遅刻したりと、ついていないことが続く新入社員を演じる彼女が、スマートフォンで漫画や小説を読み、その中の台詞から元気をもらうという内容のCMは覚えている人も多いであろう。そのどこか垢抜けないキャラクターによって、「ショートカットで少し地味目な女性」というイメージを定着させた。

 しかしそのイメージもここ3年の話である。彼女の長い下積み時代の作品を振り返ってみると、とても今とは想像がしがたいほど、キャラクターが違いすぎる。じっくりと見てみると、同じ人物だとかろうじてわかる程度で、長い紆余曲折が伺える。初めて出演したCMはソニーのネットジュークのCMで、音楽に合わせて箒をギターに見立てて弾きながら、壁や天井を歩き回る強烈なインパクトを持った作品であったが、彼女が誰なのかということはそれほど話題にならなかったと記憶している。

 そんなキャリア初期の代表作は何と言っても2007年のヒット作『恋空』であろう。新垣結衣演じる主人公の親友役で出演し、初めは薄いメイクだったのが、恋人ができたことをきっかけに派手なギャルメイクに変わる女子高生の役であった。持ち前の凛々しい顔立ちが印象的であったが、当時16歳(撮影時は15歳だったであろうか)にもかかわらず、今よりも垢抜けて見えるのだ。

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