「カルピスのCMの女の子」黒島結菜の可能性ーーその演技を支える“色のある透明感”とは?

 しかし、『ストレイヤーズ・クロニクル』ではその鬱憤を全て晴らしてくれる。岡田将生や染谷将太、成海璃子をはじめとした十代・二十代の、間違いなく今後の日本映画界に欠かすことのできない若手役者が総結集した作品で、彼女はほとんど主役と言っても過言ではない、物語の核を演じきってしまったのだ。

 

 現在公開中の『at Home』は、『ストレイヤーズ・クロニクル』と同じ本多孝好の原作を映画化したドラマで、空き巣で生計を立てる男を中心にトラウマを抱えた者たちが寄せ集められて出来た一家の物語が描かれる。その中で中学生の娘を演じる彼女の回想シーンは極めてシンプルに描かれ、学習机に向かい勉強をしているところにやってきた父親から、耳許で囁かれ、その手が彼女の肩に触れる。次のシーンではもう彼女は駅のホームで通過電車に飛び込もうとしているのだから、それだけで彼女が性的虐待の被害者であるということが、観客に容易に判る。この一連の流れには演出と編集の力があってこそだが、救われた後の気丈な振る舞いの奥に、消えることのない闇を抱えた芝居を、今現在演じることができる十代の女優は彼女以外にいないであろう。

 もっとも、映画になると何故だか影を持つ役ばかり演じている印象が否めない。11月に公開される『流れ星が消えないうちに』で演じる主人公の妹役もまたどこか影のありそうな予感がする。

 来年もまた映画やドラマに引っ張りだこになるであろう彼女が、今後どんな芝居を見せてくれるのか大いに期待が持てる。できれば『アオイホノオ』のような突き抜けた笑顔を、スクリーン上で見たいものである。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『at Home』
監督:蝶野博
原作:本多孝好「at Home」(角川文庫)
脚本:安倍照雄(「手紙」「不思議な岬の物語」)
出演:竹野内豊 松雪泰子 / 坂口健太郎 黒島結菜 池田優斗 村本大輔 千原せいじ 板尾創路 / 國村隼ほか
製作:映画「at Home」製作委員会
制作プロダクション:KATSU-do
制作協力:ブースタープロジェクト
配給:ファントム・フィルム+KATSU-do
2014年/日本/カラー/110分/DCP
(C)映画『at Home』製作委員会

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