アニメ業界発展のためには原作開発以外も必要? 「日本アニメアワード」創設の意義をA-1 Pictures 清水社長らが語る

「日本アニメアワード」創設の意義

 日本に新しいエンターテインメントのアワード(賞)が立ち上がる。一般社団法人日本動画協会が中心となって、2027年に「日本アニメアワード」を創設。アニメーターをはじめ作品作りに携わっている人たちを顕彰することで、「日本のアニメがこれまで築いてきた歴史や文化を大切にしながら、その素晴らしさを未来へつなげていきたいという思い」(一般社団法人日本動画協会の石川和子理事長)の実現を目指す。

 オーケストラの重厚なサウンドに乗って『鬼滅の刃』や『進撃の巨人』『名探偵コナン』のシーンが上映される。中川奈美やヒグチアイが『鬼滅』『進撃』の歌を披露し、倉木麻衣が『名探偵コナン』の主題歌「Secret of my heart」を歌って、集まったアニメファンを沸き立たせる。

 10月30日から11月2日の日程で、東京・池袋を舞台に開かれた「TOKYO ANIME NEXT」は、アニメの上映会やクリエイターによるトーク、子供を対象としたワークショップが実施され、日本発のアニメやその原作となった漫画が持つ存在感を、改めて知ってもらうきっかけになった。その最終日に開かれたメインイベントで、倉木らが歌を披露し、人気タレントがアニメについて語った後、「日本アニメアワード」と名付けられた新たなアニメアワードの開催が発表された。

日本アニメアワード正式発表の様子

クリエイターを称える新たな舞台を

 発表では、日本動画協会理事長で、日本アニメーション社長の石川和子が登壇。今のアニメ作りの現場には、「一枚を描く人、動きを作る人、色を作る人、音を作る人、物語を作る人、声で命を吹き込む人、作品を届ける人、可能性を広げる人」がいるということを改めて語った。そして、「作品の向こう側にいる世界を動かしている人たちを称えて、共に未来を作っていきたい」と話し、そのために「日本アニメアワード」を立ち上げることをアピールした。

 アワードの開催日は2027年11月21日に決まり、開催場所もSGC HALL ARIAKEと東京都内でも屈指の規模の会場が用意された。具体的な賞の内容については、今回はまだ明らかにされなかったが、クリエイターをメインにした賞にしたいといった意向は示された。1年後の開催時には、監督やアニメーター、原作を提供した作家に音楽を提供した作曲家、その他撮影や美術といった多彩なアニメの仕事に携わった人たちが登壇して、煌びやかなスポットライトを浴びながら表彰を受ける姿が見られそうだ。

 アニメ業界にとっても、新しく立ち上がるアワードは決して小さくない意義を持ちそうだ。発表会に先立つ10月30日に、「第39回東京国際映画祭」に連動して開催された「TIFFCOM」で、特別シンポジウム「2027年新たなアニメアワードのスタートに向けて」が開かれた。その中で、日本のアニメの最前線に立つ経営者やプロデューサーがアニメアワードの持つ意味について語った。

TAAFから刷新 背景にある「作り手にスポットを」の声

 一般社団法人日本動画協会理事で、アニメ制作会社A-1 Pictures 社長の清水暁が話したのは、今回のアニメアワード新設の経緯。今年の3月にも開催された「東京アニメアワードフェスティバル」(TAAF)をリニューアルすることになり、話し合う中で新しいアニメアワード開催が案として出てきたという。そして、「クリエイターにもっとスポットを当てるようなアワードがあった方が良い、クリエイターも晴れやかな場で表彰されて欲しいという意見が、スタジオ経営者と話す中で頻繁に出ていた」ことから、そうした方向性を持ったアワードの新設に向けた動きが始まった。

日本動画協会理事の清水暁

 実はTAAFでも、前身の東京国際アニメフェアの時代から、「東京アニメアワード」として作品を表彰するとともに、個人賞を設けて監督や脚本家、キャラクターデザイナーらを表彰してきた。2006年からは特別功労賞の部門も立ち上がり、日本のアニメ草創期から携わってきたクリエイターや声優らの功績を称えてきた。

 TAAFが終了となることで、アワードや功労賞の終了も取り沙汰されたが、東京・池袋に「アニメ東京ステーション」を設置して、アニメに関する展示会を継続的に開催している東京都の応援もあったようで、「日本アニメアワード」として改めてスタートすることになった。11月2日の発表会には、東京都の小池百合子知事がビデオメッセージを寄せ、「東京都は、アニメとその担い手の皆様をこれからも力強く応援してまいります」と継続的な支援を約束した。

 器はできた。後は中身だが、シンポジウムに登壇した東宝でアニメ事業室長兼企画グループリーダーを務める齋藤雅哉は、「作り手がフォーカスされ、アニメの視聴者のアニメの見方が変わるようなアワードを目指して欲しい」と発言。「クリエイティブの仕事のひとつひとつに価値があることを視聴者に伝えていけるようなアワードにして欲しい」とも話して、クリエイターにスポットが当たるような賞になることを期待していた。

齋藤雅哉プロデューサー

アニメ業界の価値を高めるために 問われるアワードの役割

 そうした期待に応えられる形として、ひとつの目標として挙げられたのが、米国アカデミー賞だ。スタジオ地図で細田守監督作品を手がけてきた齋藤優一郎プロデューサーは、アカデミー賞の会員であり、アニメーション部門のエグゼクティブコミッティーとして、運営や新会員の選定に携わっている。そうした立場から、齋藤プロデューサーは、「アワードとは賞レースだけではない。業界の人が価値観を作り、それを守りながらどのようにして未来につなげていく場にするかだ」ということを指摘。受賞者を選定して賞を与える以外の活動も行って、アニメ業界全体が意識を高めていく必要性を示唆した。

 クリエイターへの顕彰によって、日本が世界に誇るアニメ文化の担い手たちにスポットが当たり、その労に報いることができる。そして、顕彰された当人だけでなく、同じクリエイターとして将来の顕彰を目指して自分を高めていこうとする雰囲気を、業界全体に醸成する。そして同時に、アワードを通して業界全体がコミュニケーションをとり、問題意識を共有したり、次の時代に向けて行うべきことを考えたりするようになっていく。日本が世界的な注目を集めるアニメ大国としてあり続ける上で、アワードが持つこうした効用を、大いに高めていく必要がありそうだ。

齋藤優一郎プロデューサー

 シンポジウムでは、最後に清水がアワードの未来について、「将来、アニメ業界を目指す人が、このアワードで賞を取りたいと思ってくれるようになれば」と話し、表彰を受けることに価値があるものにしていきたいと訴えていた。そうなるためには、来年11月の第1回の表彰で、誰もが納得する受賞者なり受賞作が並び、同じように活躍したい、同じような作品を作って世界から認められたいと誰もが思えることが重要となる。

 その意味でも、「日本アニメアワード」の具体的な賞の内容に注目が集まる。広い会場をどのように使って、アワードが実施されるのかも含めて。

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