佐野元春の46年の軌跡と現在地を描く評伝 松尾潔『佐野元春 歌い続ける理由』11月27日刊行へ

 音楽プロデューサー・作家の松尾潔による評伝『佐野元春 歌い続ける理由』が、11月27日に河出書房新社より刊行される。

 本書は、1980年のデビュー以来46年にわたり日本のポップミュージックを切り拓いてきた佐野元春の軌跡と現在地に、音楽ジャーナリストとしてキャリアをスタートし日本屈指の音楽プロデューサーとなった松尾潔が対峙する一冊。「なぜ歌を書くのか」「なぜ歌い続けるのか」という問いを軸に、佐野本人へのロングインタビューを重ねながら書き下ろされた。

 執筆の起点となったのは、2001年から2026年にかけて5回開催されてきた佐野のスポークンワーズ・ライブの最新公演「In Motion 2026 空気」。松尾は客席からその舞台を見つめ、佐野がなぜ歌ではなく声と詩だけで立つ夜を必要とするのか、なぜ過去の作品を手放さず同じ形に固定しないのか、といった問いを立てていく。

 本書で松尾は「インタビュアー」「作家」「作詞家」「音楽をつくる人」という複数の視点から佐野の表現に向き合う。楽曲だけでなく、著作、過去のインタビューや報道、TV映像、作品が生まれた時代の社会背景にまで踏み込み、膨大な資料をひもときながら佐野の音楽と言葉に迫った評伝となっているという。

 収録される対話では、1985年発表の「CHRISTMAS TIME IN BLUE」をめぐるやり取りなども展開される。「平和な街も/闘ってる街も」という歌詞の意味を、2026年の世界から改めて問い直す構成だ。佐野は同曲について、戦争で被害を受ける子どもたちの平安を願ったものであり、「Ring-a-ring-a-Roses!」というフレーズに世界中の子どもたちが安心してクリスマスを過ごせるようにという願いを込めたと語っている。

 著者の松尾潔は1968年福岡生まれ。早稲田大学在学中より音楽ジャーナリストとして活動し、20代にしてアメリカの業界誌『BLACK RADIO EXCLUSIVE』で「日本のR&B市場に最も影響力をもつ人物」と紹介された。SPEED、MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加し、EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で日本レコード大賞を受賞。著書に小説『永遠の仮眠』、社会時評集『おれの歌を止めるな』などがある。

 佐野元春は1956年東京生まれ。1980年にレコーディング・アーティストとして始動し、1984年のアルバム『VISITORS』ではニューヨークで出会ったヒップホップや新たなビートをいち早く作品へ昇華した。1992年、アルバム『スウィート16』で日本レコード大賞アルバム部門を受賞。2022年には第72回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞している。昨年開催された全国ツアー「佐野元春45TH ANNIVERSARY TOUR」では約7万人を動員した。

■目次
序章 時代の空気を測る夜――スポークンワーズ・ライブ「In Motion 2026 空気」
第1章 なぜ歌を書くのか――創作をめぐる、なかにし礼との対峙
第2章 私小説の国のポップミュージック――「自由とデモクラシー」をどう歌うか?
第3章 再定義とビートニクス――過去を歌い直す誠意について
第4章 都市はなぜ歌を必要とするのか――ポップミュージックが生まれる場所
第5章 君に手渡す自由――表現者は社会とどう関わるのか
終章 佐野元春と時代の霊性――世界を知ろうとした者から手渡された歌

■書誌情報
『佐野元春 歌い続ける理由』
著者:松尾潔
仕様:46版/並製/240ページ
価格:2,860円(税込)
発売日:2026年11月27日
出版社:河出書房新社
装丁:鈴木成一
ISBN:978-4-309-25855-3

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