月刊オカモトショウ

オカモトショウが考える「家族」とは? 『キシモジン』『カミキル-KAMI KILL-』から読み解く、人間と家族のかたち

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。

 今回取り上げるのは、“最愛の母親がAIだった”という女子高生を主人公にした『キシモジン』(朝霧舟/小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」)、そして、寂れた商店街で床屋を営む兄弟を中心にしたミステリー人情劇『カミキル-KAMI KILL-』(原作:此元和津也・作画:ヤマサキリョウ/集英社「週刊ヤングジャンプ」)。家族の在り方を問う2作について、オカモトショウが語ります!

「母親がAIだった」その先にあるもの――『キシモジン』

——『キシモジン』の主人公は、勉強やバイトをがんばっている女子高生・鬼月しずく。父の死をきっかけに、大好きな母親の波子がAIかもしれないという疑念を抱くーーというストーリーです。

 母親がAIだというのはわりと早い段階でわかってしまうんです。「その後、どうするか?」がこのマンガの本筋なんですが、『AIの遺電子』(山田胡瓜/秋田書店)みたいな近未来モノではなくて、現在が舞台になっていて。いい意味で地に足が着いたストーリーなんですよ。

——実際、故人を生成AIで再現するサービスが続々と登場してますからね。

 そうなんですよね。主人公の父親は「AIママ」を作ったAIの研究者で。しずくは小さい頃からママとビデオ電話でずっと話をして、学校であったこととかを毎日連絡してる。ママはずっと単身赴任でフランスにいると思っていたんだけど、父親が亡くなった後、遺品をいろいろ調べているなかで「ママはAIだった」という証拠を見つけてしまうんです。その後、父親が働いていた会社の同僚を訪ねたり、真相に迫ろうとするというのが冒頭の流れですね。一緒に暮らしてるおばあちゃんも何かしらの秘密を握っていそうだったり、ミステリー的な要素もあって。

——AIを中心にいろんな要素が含まれているんですね。

 そうそう。最初のポイントとしては、「人間だと思っていたら、AIだった」という衝撃ですよね。これはいろんな作品に使われてる手法で、たとえば『銃夢』(木城ゆき/講談社)の主人公の女の子は、体はサイボーグで、優れたパーツに置き換えられていくんだけど「頭には脳が入ってる」と思い込んでいるんです。あるときに脳も機械で、複製可能だということに気づいてショックを受けてしまう。それは現実にもあるじゃないですか。「人間だと思ってたらAIだった」とわかって、だまされた! って炎上したり。

——頻発してますね、それは。

 この前も友達と話してたんだけど、映画を観て感動したとして、あとで「全部AIでした」とわかった場合、「今の感動は何に対してだったんだ」という虚しさを覚えるのかな? と。自分たちの世代と、物心ついたときからAIが存在していた世代では捉え方が違うでしょうけどね。

——AIの浸透によって、いろんな価値観が揺らいでいる。

 逆に時間をかけて手作りすることの価値が上がってたり。そういう状態をいろんなクリエイターが物語に落とし込んでるだと思います。『キシモジン』に話を戻すと、単行本になっている範囲でちょっとだけネタバレになりますけど、複数の人が「AIママ」を共有したらどうなるか? という展開になっていくんですよ。そのために開発されたAIなんだけど、主人公の女の子は「この人が自分の母親だ」という認識があるから、「ママを守りたい」と思い始めるんです。それを実行するためにAIママと協力して組織と戦うという。「そういう展開なんだ?!」という驚きがありますね。

 あと、主人公には幼なじみの男の子がいるんですけど、この子の存在もまだよくわからなくて。片方の腕がないんだけど、そのことには触れられないし、もしかしたら「主人公のイマジナリーフレンドなのかな」と思ってるんですけどね。そうだとすると“AIとイマジナリーフレンド”という実態のないものを対比させているのもポイントなのかなって。

——興味深いですね……。

 今後の展開も楽しみです。ちなみに夏に出た『キシモジン』の単行本の2巻は、俺も仲のいいTempalayの小原綾斗が帯のコメントを書いてるんですよ。マンガのセリフのなかに、TempalayやFCO.の歌詞が引用されていて。ぜひそこもチェックしてみてください。

——ちなみにショウさん、AIと家族になれると思いますか?

 どうでしょうね? ChatGPTと結婚する人もいるし、可能性としてはあり得るのかも。そもそも家族観って人によってぜんぜん違うじゃないですか。ペットを家族の一員と思っている人もいるし、価値観はいろいろなので。ウチにロボット掃除機があるんですけど、あまり性能がよくなくて、ヘンなところで止まってたりするんですよ。そういうときに「ダメじゃん、ここにいちゃ」って話しかけちゃったりするんですよ(笑)。

『カミキル-KAMI KILL-』は“なんでもないジョーク”も伏線に?

——(笑)続いては『カミキル-KAMI KILL-』です。こちらも家族がテーマになってますね。

 そうですね。原作者の此元和津也さんの『セトウツミ』(秋田書店)がドラマ化されたとき、劇伴とBGMを担当させてもらって。縁がある作者だし、『セトウツミ』もすごく好きなマンガだったので『カミキル』も連載が始まったときからチェックしてたんですけど、これもめちゃくちゃ面白いです。

 さびれた商店街の床屋がメインの舞台なんですけど、最初のほうは基本的に会話劇なんですよ。床屋をやってる兄と学生の弟、店に来る客や近所の人たちといろんな話をするんだけど、それって『セトウツミ』の“関西の高校生2人が川辺でだべってる”という設定に通じてるじゃないですか。(此元和津也が脚本を手がけたアニメ)『オッドタクシー』の運転手と客の会話もそうだけど、ちゃんと文脈が感じられるというか、つながってるのがいいなと。

——そういうつながりを意識しながら読むとさらに理解が深まりそう。

 好きなアーティストの新作が出て「今回はこうきたか!」という感じにめっちゃ似てますね(笑)。ストーリーを簡単に説明すると。父親が失踪してしまった兄弟が主人公で、お兄ちゃんが床屋を継いで弟を養ってるんです。ウイットに富んだ会話で話が進んでいくんだけど、1話ごとにズームアウトしてく感じがあるんですよ。床屋から始まって、だんだん商店街の全貌が見えてきて、お父さんが失踪したきっかけになったこととか、過去の話に遡ったり。『20世紀少年』(浦沢直樹/小学館)みたいな雰囲気もあるし、映像化しても面白いと思います。

 基本的にはヒューマンドラマで、そこにミステリーの要素が入ってくるんですよね。商店街でいろんな事件が起きて、その謎が解き明かされていくんですけど、人の世は奇妙というか「え、こんなこと起きちゃうの?」みたいな展開もあって。ほのぼのした感じなのかなと思ってたら、タイトルに“KILL”が入ってるだけあって、かなり危ないことも起きるんですよ。『セトウツミ』『オッドタクシー』も後半は怒涛の展開になったので、『カミキル』のストーリーもそうなるんじゃないかと思ってます。登場人物のキャラクターもいいし、悪い奴はちゃんと悪いし、過激なところやスピード感もあって。どうなるんだろう? というワクワク感がありますね。『セトウツミ』もそうだったんですけど、本当になんでもないジョークが「実は伏線だった」みたいなこともありそうだなと。

——ヤマサキリョウさんの作画もいいですよね。商店街のさびれ具合もリアルで。

 そうですよね。俺は東京出身だから、商店街がさびれていく感じとかシャッター通りみたいなものが身近にないんだけど、OKAMOTO'Sのツアーでずっと地方に行ってるから、そういう意味ではリアルに感じてるんですよね。2010年くらいからツアーをはじめて15年以上経ちましたけど、いろんな土地で時間の変化を目の当たりにすることもあって。逆に地方から尖ったプロジェクトやイベントが出てくることもあるんですけどね。

『キシモジン』『カミキル-KAMI KILL-』を読みながら聴きたい音楽

Silica Gel「Ballad of You」

Silica Gel「Ballad of You」

「フジロック」「THE FIRST TAKE」出演でも話題の韓国のオルタナティブ・ロックバンド、Silica Gel(シリカゲル)のニューアルバム。

「久々の新作なんですけど、めっちゃよかったです。近未来感、AI的な感じもあるし、寂れた雰囲気もあって。『キシモジン』にも『カミキル』にも合いそうです」

ライブ情報

■オカモトショウ 弾き語りシリーズ「Ruby Show」Vol.16~17
Vol. 16 【富山】2026年10月12日(月・祝) 富山県 社交場ニュー村門
Vol. 17 【京都】2026年10月23日(金) 京都府 Sole Café
チケット受付中! 詳細、お申込みはこちら
:https://w.pia.jp/t/rubyshow/
 
■OKAMOTO'S LIVE TOUR 2026-2027 LOSTRANGER
2026年11月19日(木)東京都 LIQUIDROOM
2026年11月29日(日)神奈川県 F.A.D YOKOHAMA
2026年12月5日(土)宮城県 darwin

2026年12月13日(日)石川県 Kanazawa AZ

2026年12月19日(土)埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
2027年1月9日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
2027年1月10日(日)北海道 CASINO DRIVE
2027年1月16日(土)鹿児島県 CAPARVO HALL
2027年1月17日(日)福岡県 DRUM Be-1
2027年1月23日(土)香川県 DIME
2027年1月24日(日)岡山県 YEBISU YA PRO
2027年2月6日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
2027年2月7日(日)大阪府 BIGCAT
チケット受付中! 詳細、お申込みはこちら:
https://www.sma.co.jp/lostranger_ticket/

■OKAMOTO'S OK,BUDOKAN
2027年3月12日(金)東京都 日本武道館
チケット受付中! 詳細、お申込みはこちら:https://www.sma.co.jp/s/sma/music/okbudokan#/

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