高橋留美子×伊藤潤二、突然の豪華対談はなぜ実現? 米国マンガ・アニメ企業「VIZ Media」とは
漫画家の高橋留美子と伊藤潤二が、ティーテーブルを挟んで語り合う。そんな意外な対談動画が、米国のマンガ・アニメ企業VIZ Mediaの公式YouTubeチャンネルで、8月8日に公開された。17分44秒の動画「VIZ Teatime for Two with Rumiko Takahashi and Junji Ito」には英語字幕が付けられ、国内外のファンから多数のコメントが寄せられている。
動画は、サンフランシスコのde Young美術館で開催された展覧会「Art of Manga」の会期中に収録されたもの。2人は互いの第一印象や交友関係、仕事場にやって来るペット、デビュー後の漫画界の変化、年齢とアイデアの関係などを穏やかに語り合う。終盤にはそれぞれの作品を批評し、高橋は『富江』をはじめとする伊藤作品の予測不能さと、恐怖のなかにある美しさに言及。伊藤も『らんま1/2』などに触れながら、高橋のキャラクター造形と物語が噛み合う強さを分析した。
では、この対談を世に出したVIZ Mediaとは何者なのか。同社はサンフランシスコに本社を置き、英語圏を中心に漫画出版、アニメのライセンス・配給、デジタルサービス、商品化などを手がける企業である。小学館は自社の海外出版事業の起点を、1986年にサンフランシスコで設立したVIZコミュニケーションズに置いている。2005年にはVIZ, LLCとShoPro Entertainmentが合併し、現在のVIZ Media, LLCが発足した。
現在のVIZ Mediaは、小学館だけの子会社ではない。公式情報では、小学館、集英社、小学館集英社プロダクション(ShoPro)の3社が所有している。日本の漫画やアニメを海外へ届ける共同拠点であり、高橋作品と伊藤作品はいずれも同社の英語版カタログを代表する存在だ。
その役割は、漫画を翻訳して出版するだけにとどまらない。2023年には、対象作品の最新話を日本と同日に英語配信するデジタルサービス「VIZ Manga」を開始。VIZ Originalsでは現在、読切と連載企画の投稿を受け付けている。2026年4月には、高橋の『MAO』を原作とするテレビアニメについて、北米、ラテンアメリカ、オーストラリア/ニュージーランドでの独占的な権利を取得した。VIZは公式サイトで、自社について「ローカライズ企業から、ポップカルチャーの出版社・プロデューサーへ転換した」と説明している。(※)
そう考えると、今回の対談は“突然のファンサービス”というだけではない。高橋と伊藤の珍しいツーショットは、日本の出版社による海外戦略が「作品を輸出する」段階から、「作家と読者が出会う文脈を現地で編集する」段階へ進んでいることを象徴する企画といえそうだ。
参考
※ https://www.viz.com/press-releases/v/1006723