【漫画】もしも不老不死の男に恋人ができたら? あまりにも切ない愛を描く『永遠に君を愛してる』

 不老不死の存在が、人間を愛したら――。漫画『永遠に君を愛してる』は中世の日本を舞台にしたラブストーリーだ。

 第79回「ちばてつや賞」を受賞した本作は、作者・末太シノさん(@shinomatsuda)が漫画家を職業にする起点にもなった。日本画も手がけ、連載作『女北斎大罪記』でも知られる彼女に、本作の制作背景と創作への向き合い方について話を聞いた。(小池直也)

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『永遠に君を愛してる』(末太シノ)

――受賞は2018年。当時は働きながらの制作だったとか。

末太シノ(以下、末太):普通に働いていたので、隙間時間や旅行の途中にちょこちょこ描いて仕上げました。半年くらいかかったと思います。

 ただ、この作品で賞をいただいて、「漫画家を職業として目指してもいいのかも」と思えたんですよ。シンプルに隙間時間で制作を続けるのは体を壊すほど大変でしたし、夫が応援してくれたことも大きかったです。ただここから、連載が決まるまで5年かかりましたけどね。

—―やはり、和風の物語がお好きなのですか?

末太:そうなんです。両親が神社やお寺が好きで、旅行はそういう場所ばかりでした。万葉集など昔の歌も好きで、私の本名もそれに由来しています。古文が好きな人には、名前を見た瞬間に「ああ、あれね」と言われるんですよね(笑)。

 あとは、その文化の当事者ではない人が描くことで、当事者が嫌な思いをするということが起きにくいこともありますね。

――「不老不死」という題材は、どのように着想したのでしょう。

末太:「人間のこういう部分がいいよね」という話を描くときは、人間じゃないものを並べると描きやすいということがひとつ。あとは、ちょうど実家を出たくらいの時期で、ひとりで生きていけるのかなと不安だったんです。そのときに家事や契約の読み方など、いろいろなことを知っている自分に気づいて。

 そのときに「これは親が教えてくれたからだ」「離れても親の愛で生きているんだな」と思ったんですよ。それを漫画にしたかったんです。ただ親子の物語だとそのまますぎるので、恋愛の形にしてエンタメに仕上げました。「誰かの知識が愛となって、その人を一生助けていく。それが永遠の愛」というテーマですね。

――主人公の「ユキ」と「ハル」という名前には意味が?

末太:名前はかなり適当です(笑)。「外で春を迎えるのは~」というセリフが会話にあったので、じゃあ「ハル」でいいかと。それと対照的なのは冬だから「じゃあユキで」という流れです。

――物語はどう組み立てていくのでしょう。

末太:一番の盛り上がりを先に考えて、そこに至るにはどうするかを逆算します。だいたいどの作品もそうですね。意識しているのは、説明臭くならないようにすることくらいでしょうか。上手くいくときは一発でネーム(下書き)が通るのですが、つまずいたアイデアは一生直してもボツになりますね(笑)。初稿がダメなものは、たぶん背骨からダメなんだと思います。

――作画で力を入れた点は?

末太:顔ですね。顔のアップのシーンに一番時間がかかっています。顔が好きなんです。能面が好きなこともあって、表情に興味があるというか。演技でも「こうするとこういう顔に見える」という型があるじゃないですか。それを組み合わせると表情になる、というのが面白くてやっています。

 橋が崩れる見開きは、一番アクションのあるところなので入れましたね。吊り橋は形がカッコいいので好きです。

――『女北斎大罪記』の連載は今振り返っていかがですか。

末太:資料集めが本当に大変でした。これはどうなっているんだろう、と調べてもわからないことばかりで。歴史ものって、ネームを作って絵を描く以外の苦労がすごく多いんです。

 ただ、北斎漫画に関わった牧墨僊を詳細に描いた創作物は、お栄を扱った作品では他になかったと思うので、それは描けてよかったなと。ただ、想定より早く終わることになってしまったので、変なところで終わってしまったな、という思いはあります。

――今は「コルクマンガ専科」で学んでいると聞きました。

末太:連載を経て、自分の漫画力のなさを感じたので、現在、漫画講座で習っています。絵は美大で学びましたが、漫画は教わったことがなくて。何でも習ったほうが、到達点は同じでも一直線で行ける気がするんですよ。

 あとは漫画家の友達がいなくて、個人事業主的な相談ができる相手がほしかったというのもあります。相談できるコミュニティに入れたのはよかったです。

――次回作の展望を最後にお願いします。

末太:着物を描くのが好きなので、やっぱり和風がいいですね。ヒラヒラしていて、描いていて楽しいんです。ただ、背景のことを考えると現代のほうがいいのかな、とも思っていて……。歴史ものは好きなんですけど、時間がかかりすぎてしまうから、そこをどうするか考えているところです。

 あとは、出版社に対して恩を返したいという気持ちが強いんですよ。連載って、たくさん売れている漫画家さんがいるからこそ、私のような人間も描かせてもらえているわけじゃないですか。いいものは描けたと自分では思っているし、評価してくださった方や買ってくださった方もいる。だからこそ次はきちんと数字でも返したいです。

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