TBSラジオ記者・澤田大樹に聞く、“政治を面白がる”ことのメリット「勝ち負けではなくて、もっとフラットに捉えてほしい」

澤田大樹『永田町の人をウォッチしてみた よくわからない国会議員の仕事』(カンゼン)

 TBSラジオ記者であり、ポッドキャスト『セイジドウラク』のパーソナリティを務める澤田大樹氏の書籍『永田町の人をウォッチしてみた よくわからない国会議員の仕事』(カンゼン)が、6月22日の発売後、たちまち重版が決まるなど話題となっている。

 本書は多くある政治本のように、特定の政治家を取り上げたものや政局を解説するものとは違い、国会議員の働き方や国会の仕組みを、ユーモアを交えながら解説するガイド本である。この中で貫かれているのは『セイジドウラク』と同じく「政治を面白がる」姿勢であり、これこそが他の政治本にはない独特な魅力となっている。

 著者の澤田氏に、これまでにない政治本を手掛けるようになった経緯と、その狙いを聞いた。

メディアの受け手と政治をつなげる道を作りたい

澤田大樹

ーー政治記者として活動している中で、本書を書こうと考えたきっかけを教えてください。

澤田:2021年の著書『ラジオ報道の現場から 声を上げる、声を届ける』(亜紀書房)は、ラジオと報道について書いたので、違うアプローチの本を作りたいというのがありました。私の本業が政治取材なので、政治に関する本を書きたいと思っていたんです。ただ、政治記者が書くものは政局やニュースの舞台裏、あるいは特定の政治家にスポットを当てたものがほとんどで、メディアの受け手と、国会や政治の舞台を近づけるような本はなかなかありませんでした。それをどうにかしたいと、ずっと考えていたんです。

 そんなときに、この本でも対談している霞いちかさんの『霞が関の人になってみた 知られざる国家公務員の世界』(カンゼン)を読んで、こういうアプローチもあるのかと気づいたんです。霞さんはもともと政治とは関係のない業界にいて、そこから霞が関で働くようになった。要するに外からの目線で霞が関を捉えているんです。中の人からするとすごく当たり前のことが外からの目線で異化される、受け手にとっては発見、気づきを与えるものになっていて、とても面白く読みました。そのタイミングで、これの政治バージョンを作りませんかとお声がけをいただいたので、これまでにないアプローチの本になると考えて、書き始めました。

ーー「政治家は本当に忙しいのか」や「国会期間中以外はどのような活動をしているのか」など、今までの政治本にはなかった内容になっています。

澤田:中の人たちからしたら当たり前のことで、なにが面白いの?という感じでしょうが、そうではない人たちに届けたいというのがありました。メディアの話で恐縮ですが、新聞の政治面は国会議員と政治記者しか見ていないという話があるぐらい、内輪の話題になっている現状があるので、メディアの受け手と政治をつなげる道を作りたいという気持ちがあったんです。

ーー受け手と政治をつなげたいという考えは、いつから持っていたんでしょうか?

澤田:私が仕事をしているラジオというメディアが、政治に深く入り込むのが難しいメディアなんです。たとえば政治取材では、テレビや新聞は政治部の記者が数十人、配置されていて、それぞれ担当を持って取材しています。一方でラジオはひとりですべてをやるので……。

ーーTBSラジオの政治記者は澤田さんだけなんですか?

澤田:そうなんです。どうしてもマンパワーが不足しますので、テレビや新聞とは違うアプローチをしないと、取材自体が成立しないんです。しかもテレビの場合、数十人で活動しつつも放送で流れるニュースは1分ぐらい。一方でラジオは10分ぐらいあるんです。そうなると、起こった事象の一部を切り取っていると、コンテンツとして成立しない。映像もないので、背景や側面を全部説明することになるんです。結果として、テレビとは違う部分も見えてきます。私がやっている仕事自体が政治ガイドになるし、そのまま本になるなと思っていました。

東日本大震災の取材で感じた、受け手の方との距離

ーーラジオの記者をやっていたからこそ生まれた発想ですね。澤田さんはキャリアのスタートがTBSラジオですが、ラジオの仕事をしたいと考えていたんですか?

澤田:もともと広告会社のCMプランナーになりたかったので、ラジオ記者はまったく考えていませんでした。就職活動でも放送局はほとんど受けていなくて、広告会社を受けて落ちまくっていました。その中である広告会社の面接を受けたとき、担当の方が「君のやりたいことは放送局のほうが合うんじゃないかな」って、ボソッて言われたんです。学生のときは自分のことはよくわかっていませんでしたし、それなら受けてみるかと、たまたま募集が出ていたTBSラジオに応募したら受かったという感じでした。もともとラジオはよく聞いていて、メディアとして面白いと考えてはいたんですけどね。

ーー最初から政治記者だったんですか?

澤田:いえ、最初はバラエティ番組のADでした。ただ、社員になったことで満足してしまって新しいアイデアも出さず、目の前の仕事をただこなしていました。そうしたらバラエティ部門に居場所がなくなってしまい、ニュース担当の部長に廊下でいきなり「おまえニュース好きらしいな」って声をかけられて、報道に異動になったんです。

 配属後、東日本大震災が起こって、私も宮城県に行って毎日、現地の様子をTBSラジオだけでなく地元放送局に向けてもレポートすることになりました。特に地元局では当時はレギュラー番組のコーナーもできない状態で、10分ぐらいのレポートを1日に10回ぐらいしていたんです。向こうでは、取材のために自転車で移動しているとパパンッてクラクションを鳴らされて「さっき聞いていたよ」って現地の人がアピールしてくれたり、受け手の方との距離が近いのを感じてすごくうれしかった。東京の放送局にいると、誰が聞いているのか正直、わかりにくかったんですけど、地方に行くと農家の方やドライバーの方とかが聞いてくれているというのを、はっきり感じたんです。そこから、ラジオの報道というのはどうすればいいんだろうと、意識的に考えるようになったんです。

 そのあと、TBSテレビに出向してテレビの報道を経験しました。たくさんの人に見られている番組に携わる中で、影響力はたしかに大きいけれど使える尺が短くて、「もっと面白いことがあるのにな」と思ったり。ラジオだと映像がないのでしゃべりだけになるけれど、じゃあ、どうやって伝えようかと考えたり、ラジオにしかできないことがあることに気づいて、そこを突き詰めればメディアとして生き残れるんじゃないかとか、いろいろ考えました。当時の経験やそこで作ったTBSテレビ報道局との関係性は、そのあとでラジオに戻ったとき、大きな財産になりました。

ーーどちらもそれぞれ強みはあります。テレビとラジオ、正直、どちらが好きですか?

澤田:ラジオのほうがぜんぜん好きです。ここでテレビが好きって言ったら怒られちゃう(笑)。

まずは面白いと思えるところを語ってほしい

ーー話を政治に戻します。欧米など諸外国ではパブで政治議論がされるなどオープンである一方、日本では「居酒屋で政治の話はしてはいけない」といわれるように、政治の話がタブー視される傾向がありました。この違いはどこにあると考えますか?

澤田:小さい頃から、家庭で政治の話をすることがないことが大きいのではないでしょうか。私も、一緒にポッドキャストをやっている宮原ジェフリーさんも、食卓で政治の話が出る家で育ったので、タブーという感覚はないんです。「語る」ためには「知る」必要がありますが、それはテストのための勉強というより、コミュニケーションのためなので苦に感じることもありませんでした。セイジドウラクで『しくみがわかればガチでおもしろい!選挙・政治のふしぎ』(小学館)という、教科書っぽい本を作ったのも、政治をタブーにしてほしくないという気持ちがあったからです。

 そもそも面白いことって、すごく些末なところにあるものだと思うんです。たとえば、あの候補者は本人と選挙ポスターの顔が違いすぎない?という細かいところを面白がる。そこから調べてみたら、実はルール上は本人とポスターの顔が違っていてもいいことがわかる。そういうことの積み重ねが、政治自体に興味を持つスイッチだったりするんです。政治について語らないことは、そのスイッチ自体が排除されてしまうので、家でもどこでも、まずは面白いと思えるところを語ってほしいと思います。

ーーたとえば「セイジドウラク」のリスナーはどのような層が多いのでしょうか?

澤田:男女比はほぼ半々で、30~40代がボリュームゾーンになっています。若い頃に比べるとライフステージが変わって、子どもが生まれたり親の介護を考えなければならなくなったり、政治に関わらざるを得なくなる。政治に関する情報を欲する世代なんだろうと思います。

ーー今は新聞やテレビ以外にも、動画やSNSなど政治を扱うメディアが増えています。これについてはどうお考えですか?

澤田:今はソフトやアプリなど技術的なハードルも下がって、再生するプラットフォームもたくさんあります。受け手にとっても、アクセスはすごくしやすくなったと思います。ただ、極端なコンテンツのほうがどうしても再生数が伸びますし、煽れば煽るほどお金が稼げるので、それ自体が社会にとって良いことなのかは考えるところです。煽って論破したり、バカにしたりすると、政治っておっかないし声に出しづらいって思う人が増えるので、それは健全ではないですよね。

 そうではなくて、まずは知る、面白がるというところから始めてもらう。面白すぎるコンテンツというのは入りやすいんですけど、一方で対話や調整というものと、どんどん距離が離れていってしまう。それはすごく不幸なことだと思います。政治というものを勝ち負けではなくて、もっとフラットに捉えてほしいなということは、問題意識としてあります。

ーーご自身がポッドキャストをやっていて、発信者として意識していることはありますか?

澤田:一緒にやっている宮原さんとは、面白すぎないものを作ろうと話しています。面白すぎるというのは行き過ぎていることですし、そうなるともう対話ができない。あいつはダメだとか言っているのでもなく、教科書的に正しいことだけ言っているのでもない、中間の位置をどうとるのかということです。

ーーこれまでラジオ放送、ポッドキャスト、そして本で政治を伝えてきました。今後、なにか新しい方法はお考えですか?

澤田:まったくやっていなかったわけではないんですが、動画もやらなきゃとは考えています。以前、細田衆院議長(当時)に統一教会問題のことを聞いて、なにも答えてくれないことが何度も続いた動画を1年半、Xにあげ続けたらすごく注目されたんです。やはり映像があると強いなと思いました。ラジオの報道でもやれることはまだたくさんあって、自分のリソースをどこまで割けるかということもあるので、どうしようかなという感じですが。

ーー本はどうでしょう?

澤田:第2弾をいただけるのでしたら、また違ったタイプの本を出したいと思います。

■書誌情報
『永田町の人をウォッチしてみた よくわからない国会議員の仕事』
著者:澤田大樹
価格:1,800円+税
発売日:6月22日
出版社:カンゼン

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