グルテンフリーで体質改善はできない? 欧米流の健康法が日本人には「間違い」と言える科学的根拠
最新の科学が明かす、日本人と欧米人の「体質」の決定的な違い
テレビや雑誌からSNS、ショート動画にいたるまで、「健康」は常に人々の関心を集めるテーマだ。ダイエット、肩こり対策、睡眠改善、がん予防……健康にまつわるありとあらゆる情報があふれている。中には明らかに根拠の乏しい情報や、誤った情報もある。さらに厄介なのは、一見正しく見えても、条件次第で話が変わってくるケースもあるということだ。
次の三つの健康法のうち、正解はどれでしょうか。
①グルテンフリーで腸内環境と体質を改善
②ナッツとオリーブ油で健康的にダイエット
③骨を強くするため、牛乳をしっかり飲んでいる
これは2026年3月に刊行された奥田昌子『最新 欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」科学が示す、人種と病気の新常識』(ブルーバックス)の前書きに登場するクイズだ。いずれも、どこかで聞いたことがある健康法ではないだろうか。実践している人も多いかもしれない。
しかし本書では、この三つについて「じつは、すべて間違いです」と明かされる。欧米人には有効でも、日本人には同じ効果が期待できない場合がある、というのだ。
つまり本書が問うているのは、ある健康法が「正しいか、間違っているか」だけではない。それが、どのような体質の人に、どのような条件で当てはまる知見なのか、ということだ。日本人と欧米人では、病気のなりやすさや食べ物への反応に違いがある。本書はその違いを、最新の研究にもとづいて読み解いていく。
単なる食べ物の良し悪しではない、生活様式と病気の深い関係
本書は大きく三部構成になっている。第1部「体質を知れば常識が変わる」では、そもそも「体質」とは何か、というところからスタートし、体質が何によって決まるのか、欧米人と日本人の体質にはどのような違いがあるのかを概観する。先に引用したような、よく聞く健康法がなぜ日本人には当てはまらないのかも解説される。
第2部「生活習慣病の新常識」では、食生活の欧米化がもたらした影響を概観した後、糖尿病、高血圧、動脈硬化などの代表的な生活習慣病を順番に解説していく。生活習慣病以外にも、花粉症やアレルギーがなぜ増えているのか、予防策はあるのか、といった話題も取り上げられる。
どの章でも「欧米でよいとされる健康法」がなぜ日本人にはそのまま当てはまらないのか、研究やデータを参照しながら丁寧に説明されている。単に「何を食べればよいか」「何を避ければよいか」という話を並べるのではなく、生活様式の違いやその変化が、体質や病気のあり方をどう形作ってきたのかを追っていく構成になっている。
第3部「がん予防のための新常識」では、がんはなぜ発生するのか、どのように予防を考えればよいのかといった基礎知識を確認したうえで、大腸がん、胃がん、乳がん、膵臓がんなど、日本人がなりやすいがんを取り上げる。がん予防の観点でも、地域差や性差、生活習慣の変化が重要だ。
情報に惑わされないために、「自分の体質」へ引き寄せて考える力
本書は、2016年に刊行された『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』の最新版にあたる。随所でこの10年間の研究に基づいた記述が追加され、参照する統計データも最新のものに更新されている。また、新型コロナウイルスなどの感染症やアレルギー疾患、膵臓がんについての解説が新規に追加されている。
たくさんの新しい知見が追加されている一方で、本書では「まだ分かっていない」という記述も少なくない。これは弱点ではなく、科学に基づく健康書として重要な姿勢だろう。
健康情報に触れるとき、私たちはつい分かりやすい答えを求めてしまう。「これを食べればよい」「これはNG」「この習慣で病気を防げる」といった断言は魅力的だ。しかし、人体はそれほど単純ではない。
「正解」を求めてそのままなぞるのではなく、根拠を確かめ、いつどこで誰を対象にした研究なのか確認し、自分の体質に引きつけて考える。本書を読み通せば、日々目にする健康情報に対して、「それは本当か」「自分にも当てはまるのか」と一歩立ち止まって考える感覚が養われるだろう。
■書誌情報
『最新 欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学が示す、人種と病気の新常識』
著者:奥田昌子
価格:1,210円
発売日:2026年3月19日
出版社:講談社(ブルーバックス)