【漫画】先輩の愚痴を聞くことほど“時間の無駄”はない? 夢見る新社会人の背中を押す『新卒社畜の夢をバーテンダーが潰そうとする話』
作者自身の葛藤や経験から生み出された登場人物のセリフは異様にぶっ刺さる。Xへ投稿された『新卒社畜の夢をバーテンダーが潰そうとする話』は、夢を抱きながらもどこかで諦めている人の胸を打ち、さらには背中を押してくれる読切漫画だ。
登場人物の詳細な心理描写と、大胆な展開が魅力的な本作を手がけた古河コビーさん(@furuCoby)に制作の裏側を聞いた。(望月悠木)
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自分自身の葛藤がベース
――『新卒社畜の夢をバーテンダーが潰そうとする話』を制作した経緯を教えてください。
古河:漫画家を目指していた時に、「月刊少年シリウス」(講談社)の新人賞へ応募するために制作した読切作品です。現在は商業漫画家として活動していますが、当時は漫画家を目指して試行錯誤している最中だったので、「自分が本当にわかる感情を描こう」と考えました。
――その思いが夢を追うことに葛藤する船山というキャラにも表れているんですね。
古河:そうです。コロナ禍の自分自身をベースにしています。「会社を辞めてでも夢を追いかけたい」という気持ちや、その一方で「現実的な不安もある」という葛藤を作品に落とし込んでいきました。仕事に追われながら将来について悩む船山の姿には、当時の自分の心境が反映されています。
――だから船山の心情はとてもリアルだったのですね。
古河:仕事が忙しくて創作に時間を使えないことへの不満はありましたが、一方で本当に夢を追う覚悟があるのかと問われると、自信が持てない自分もいました。「仕事のせいで挑戦できない」と思いながらも、どこかで仕事を言い訳にしていた部分もあったと思います。
そのため、船山を描く際には、単純な被害者にしないよう意識しました。仕事への不満だけでなく、自分自身の弱さや迷いも含めて描くことがリアルさにつながったと思います。
――美浜との出会いをきっかけに船山の気持ちが揺れ動き始めますが、ストーリーはどのように組み立てましたか?
古河:当時の自分自身の気持ちを思い出しながら、構成しました。私はなかなか決断できずに悩み続けるタイプなので、「本当にこのままでいいのか」「挑戦しなくて後悔しないのか」と、自問自答しながら覚悟を決めていきました。その過程を物語として表現するため、迷いや不安を抱える自分を船山に、背中を押すもう1人の自分を美浜に投影しています。
――会社のトイレで泣いていると、台風の影響によってトイレが決壊する、という展開はとても大胆でしたね。
古河:あの台風の展開はコロナ禍を象徴したものです。当時は仕事がつらく、「会社に隕石でも落ちればいいのに」といった極端なことを考えたこともありました。ただ、実際に起きたのは、そんな想像のさらに斜め上をいくパンデミックでした。
――隕石とは異なりますが、人生に大きな影響を与える出来事ではありました。
古河:そうですね。コロナ禍によって働き方も生活も大きく変わり、結果的に私自身も漫画制作を再開することになります。振り返ると、あの出来事は人生の転機でした。そのため、船山の人生を大きく揺るがす出来事として台風を描きました。私の感覚では、むしろ台風は現実に起きたパンデミックよりも穏やかな表現だったと思っています。
――美浜が諭すシーンは“説教臭さ”を生むリスクもありますが、描くうえで意識したことは?
古河:あのセリフは誰かを見下したり正論をぶつけたりするためではなく、当時の自分自身に向けていた言葉がベースになっています。美浜は作者が読者を諭すためのキャラクターというより、「挑戦したいのに踏み出せない自分」を鼓舞するための存在として描いています。読者へのメッセージというよりも、当時の自分との対話に近かったと思います。
――今後はどのように漫画制作を進めていく予定ですか?
古河:現在連載中の『退職代行切金さん ~社畜の非常口はこちらです~』(マンガボックス)の制作に全力を注いでいます。今は連載を回すために忙しい日々を送っていますが、作品をより良いものにできるよう日々取り組んでいます。状況が落ち着いたら、同人誌やSNS漫画などにもまた挑戦したいです。これからも商業・個人を問わず、自分が描きたいと思ったものを描き続けていきたいです。
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