【漫画】1日の食費が140円の中学生、どう過ごす? 貧困家庭グルメドキュメント『なんぼの食卓』
食べ盛りの中学生なのに、1日の食費が140円――。漫画「節約生活中の中学生ふたりが焼肉をするまでの話」がXに公開されている。
本作は『なんぼの食卓』の第1話。貧困家庭の中学生ふたりが楽しくグルメを楽しむ日常と、その傍らに置かれる督促状の対比がリアルだ。独特なバランスを初連載で描いた作者・餅田ぷりさん(@motipuri00)に話を聞いた。(小池直也)
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――いいねが2000ほどついていますが、反響はいかがですか。
餅田:実はこの作品で、初めて批判コメントをいただいたんですよ。「子どもが辛い状況にいる題材をわざわざ描くのはどうなんだ」と。
これまでの読切作品は届く人が限られていた印象でしたが、必ずしも好意的ではない方にも届くようになったことが、嬉しかったです。
――批判が嬉しいというのは独特ですね。
餅田:批判自体は嬉しいものではないのですが、作品が議論を呼ぶのは意味のあることだと思うんです。私が何かを提供して、色々な価値観が湧くのがいいのかなと。
――僕も食事ってエンタメだと思っているので、節約しながら食を楽しむふたりに共感したんですよ。なぜこの題材を?
餅田:最初は関西の男の子ふたりの掛け合いで、ほのぼの漫画を描こうと考えていたんです。でも、ご飯の題材を描こうとすると「満足に食べられない子もいるよな」、お風呂の描写でも「お風呂に入れない子もいるよな」という気持ちがずっとあって。それが出てしまった感じです。
――その想像力の背景には何が?
餅田:もともと精神保健福祉士の資格を持っていて、家族も全員エッセンシャルワーカーなんですよ。自分もそうなりたかったんですけど、ちょっと上手くいかなくて漫画家になりました。
でも漫画家になると、目の前の人がいなくなるじゃないですか。画面の向こうの誰かに話しかけることになるので、逆に現実に生きている子たちが気になって、どんな漫画を描こうとしても出てきちゃうんです。
――家庭料理の描き方も印象的でした。
餅田:外食や出来合いじゃなく、家庭料理が何より好きで。特売のキャベツと鶏肉ときゅうりを前に「これで何ができるだろう?」と考える時間が好きですね。
――美味しそうに描くコツは?
餅田:「見て描くこと」ですかね。普段から、じっと食材を見てますし、卵なら卵を見ながら描きます。
――キャラクター設定でこだわった点は?
餅田:絶対に悲壮感を出さないこと。あと、必ずふたりにすること。福祉の現場で感じたんですけど、同じ課題を抱えていても十人十色で全然違うんですよね。マイノリティの中にも多様性がある。
そこは絶対に描かないとダメだと思ったので、対照的なふたりにしました。作画でこだわるのは線で、柔らかく温かみのあるイラスト寄りの線を意識しています。
――ラストの督促状、ドキッとしました。
餅田:最初の構想では1話は完全にほのぼので終わる予定だったんですよ。ただ担当編集さんから「2話も読みたいと思える衝撃がほしい」とオーダーがあって。
結果的にあのラストのおかげで2話以降に進んでくれた読者さんが多かった印象なので、色々な人を連れてきてくれたなと思ってます。
――初の連載作とのことですが、やはり感慨深い心境なのでしょうか?
餅田:どちらかというと「通過点」という感じですかね。世に出したい題材はある程度決まっていて、それを今いきなりやるのは実力的にもネームバリュー的にも難しい。だからまずは、餅田という作家が「こういう題材を扱ったときにこういう答えを出せます」という信頼を読者と築くこと。そこを意識しています。
――今後どう描いていきたいですか。
餅田:貧困は「テーマ」ではなく、このふたりの「要素」でしかありません。社会問題を描きたいわけではないんです。最終ページに「ドキュメント」と書いているのも、主人公ふたりの記録であるという宣言で。
普通なら「焼肉をするまでの話」と書くところを、あえて「ドキュメント」として彼らが物語の外——つまり私たちの側にもいるような雰囲気を出したかったんですよ。同じ状況に置かれたふたりが何を思い、どう思春期を駆け抜けていくのか。そこを描いていきたいです。