漫画版『銀河英雄伝説』が10年でついに完結! 不朽の名作を初めて描き切った藤崎竜の功績

※本稿は『銀河英雄伝説』のネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。

 2月18日発売の「ウルトラジャンプ」にて、漫画『銀河英雄伝説』(原作:田中芳樹・漫画:藤崎竜)がついに完結を迎えた。10年にわたる長期連載の終了は、多くのファンに深い感動と衝撃を与えている。

ウルトラジャンプ編集部 X(@ultra_jump)より

 本作は、遠未来の銀河系を舞台に、銀河帝国と自由惑星同盟の対立をラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーという2人の天才を軸に描く“スペースオペラ”。田中芳樹の壮大なSF叙事詩を原作に据えつつも、藤崎特有の鋭い感性と大胆な解釈を鮮やかに融合させることで、独自の魅力を放つ作品へと昇華されている。

 2015年に「週刊ヤングジャンプ」にて連載がスタートすると、後に「ウルトラジャンプ」へ移籍。月刊連載ならではの緻密な描写で密度を高めながら、その歩みを止めることなく進めてきた。最終回となる第238話は、表紙と巻頭カラーを飾り、皇帝ラインハルトが25歳の若さで世を去る伝説の幕引きとなった。

 『銀英伝』のメディア展開は極めて多岐にわたり、本伝・外伝合わせて162話という空前の規模を誇るOVAシリーズや、2018年から続く新アニメシリーズ『Die Neue These』が制作されるなど、今なお新たなファンを魅了し続けている。道原かつみ版など複数の漫画化作品が存在するが、原作の序盤から終局までを一つの物語として描き切ったのは、この藤崎版が史上初めてとなる。

 この完結を受け、ネット上でも、「あの藤崎竜が漫画家人生の10年を銀英伝に捧げてくれたことに感謝しかない」「原作誕生から40年以上経つのに、最後まで完走したコミカライズが今回初めてという事実に驚いている」「ヤン・ウェンリーの死に様が、燃え尽きた『あしたのジョー』を彷彿とさせる伝説的な演出で震えた」「独自のメカデザインや衣装が最後まで一貫していて、藤崎ワールドとしての銀英伝が完成した」といった感想が聞かれた。

 とりわけ読者を驚かせたのは、原作では行方不明とされていた先代幼帝エルウィン・ヨーゼフ2世の生存を明確に示すという、大胆な結末が用意されていたことだ。彼を秘匿し生き永らえさせていたのは、かつて皇帝の寵愛を巡りラインハルトの姉アンネローゼを激しく憎んだ、物語初期のラインハルトの政敵であるベーネミュンデ夫人であった。この生存劇は、ラインハルト亡き後の帝国において、正統な血筋を引くヨーゼフ2世と、ラインハルトの遺児である新帝アレクサンデル・ジークフリード・フォン・ローエングラムとの間で繰り広げられるであろう「次世代のバトル」を強烈に予感させる。こうしたifの余韻は、完結という寂しさを超え、読者に新たな歴史の想像を促す藤崎ならではの「置き土産」と言える。

 藤崎はこれまで『封神演義』や『屍鬼』といった作品を通じて、古典や小説を漫画という媒体へ高度に翻訳する卓越した手腕を示してきたが、本作においても、原作〜アニメ版の人気を支えてきた独創的な宇宙艦艇のデザインや重厚な政治劇を損なわない構成力で読者を圧倒し続けた。3月18日に発売予定の最終35巻をもってこの壮大なプロジェクトは完結するが、このボリュームは藤崎が本作に注いだ情熱の結晶であり、名作に新たな命を吹き込んだ不滅の功績である。

 伝説は幕を下ろしたが、ラインハルトとヤン、そして彼らを取り巻く英雄たちが駆け抜けた軌跡は、これからも歴史の一部として読者の心の中に残り続けるに違いない。



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