ジャンプ『ピングポング』なぜ連載終了? 人気漫画家たちも注目した作品が短命だった理由
『週刊少年ジャンプ』49号(集英社)で、片岡誉晴が手掛ける漫画『ピングポング』が連載終了を迎えた。熱狂的なファンが多く、ほかの漫画家たちからも支持されていた作品だったため、ネット上では完結を惜しむ声が相次いでいる。
同作は家庭の事情で10億の借金を背負った高校生・御門平を主人公とした物語。平は要睦月という謎の女性にスカウトを受け、裏社会で行われている「ピングポング」という競技に身を投じることになる。この「ピングポング」は“何でもあり”のルールのもと、巨額の金銭を賭けて行われる闇卓球で、平は次々と強敵たちと対峙していく。
同作の連載が始まったのは、2025年7月7日に発売された『週刊少年ジャンプ』32号でのこと。約4カ月、全17話での完結となったが、その内容は短期連載とは思えないほど濃厚だ。
第1話からボールを発火させる敵というトンデモ卓球の描写で幕を開けたが、その後も銭湯の洗い場や通行人でごった返す渋谷のスクランブル交差点など、シチュエーションの異常性が加速度的に増していくことに。最終的に戦いの舞台は宇宙となると共に、物語のスケールも読者の予想をはるかに上回った方向へと突き抜けていった。
今まで誰も見たことのない展開の卓球漫画に、大きな期待が寄せられており、読者のあいだでは「ここ数年の新連載のなかでも面白い」と評価する声も少なからず上がっていた。
また新連載にしては稀なことだが、X(旧Twitter)上でほかの漫画家からも度々言及を集めていたのが印象的。たとえば『ダンダダン』の龍幸伸は「ピングポングが最高すぎる!」といった感想を2週連続で投稿しており、『忍者と極道』の近藤信輔も「ピングポング、毎週全力で強烈なパンチを放って読者をビビらせたる!って姿勢が凄く好きだった」と賛辞を惜しまずに語っていた。
さらに『魔男のイチ』の作画担当・宇佐崎しろは、最終話掲載を報告する片岡の投稿に対して、絶賛と労いの言葉を送っている。
これだけ多くの人の心を掴む面白さがありながら、なぜ同作は長期連載につながらなかったのだろうか。
苦戦した理由はアンケート至上主義?
先に断っておくが、『週刊少年ジャンプ』で連載が続くかどうかは、必ずしも作品の面白さによって決まるわけではない。とくに同誌では新連載が読者アンケートによって厳しい選抜に晒されると言われているため、本当に考えるべきは“アンケート至上主義との相性の良し悪し”だろう。
そもそも同誌ではスポーツ系漫画が生き残りにくく、卓球も例外とは言えないジャンルだ。過去にも『P2! ―let's Play Pingpong!―』や『フルドライブ』、『卓上のアゲハ』といった卓球漫画が存在したが、いずれも2年以上の長期連載にはなっていない。『ピングポング』はある種の超次元卓球ではあるものの、序盤は後半に比べるとエンジンがそこまでかかっていなかったため、読者アンケート的に苦戦するスタートとなったのではないだろうか。
とはいえ第2話の時点でバーのカウンターで卓球する展開に突入しているため、同作は決してテンポが遅いわけではない。むしろ一般的な漫画と比べると、かなり展開が早い部類といってもいいだろう。それでも足りなかったくらい、『週刊少年ジャンプ』の新連載は厳しい競争環境に置かれているということかもしれない。
なお作者の片岡は、最終話が掲載された『週刊少年ジャンプ』49号の巻末コメントにて「のたうち回る程悔しい。次当てる頑張る」と次回作に賭ける熱い想いを打ち明けていた。『ピングポング』で実力を知らしめた作者が、次に一体どんな作品を手掛けるのか楽しみだ。