【漫画】プレゼンに必要な能力とは? コピーライティングから百貨店の存在意義を考える『ゾワワの神様』がリアルで面白い
「百貨店は、もう時代遅れなのか?」――それを覆すべくコピーライターが白熱のプレゼンを繰り広げる。そんな漫画「百貨店というビジネスは時代遅れか?」がXに投稿された。
こちらは『ゾワワの神様』のなかの1エピソードで、作者・うえはらけいたさん(@ueharakeita)の、実体験に基づくリアルが詰め込まれた内容。他業種でも学びが多い本作が生まれた背景に迫る。(小池直也)
続きを読むには画像をクリック
――反響などはいかがですか。
うえはらけいた(以下、うえはら):『ゾワワの神様』の一遍ではあるものの、シリーズとは関係なく様々な方からコメントをいただきました。特に百貨店や実店舗に愛着のある方からは「これこそがお店で買い物する理由だよね!」と言ってもらえたりもします。
――なぜ百貨店の広告についてのプレゼンを描こうと?
うえはら:こちらは自分の実体験に基いた部分が大きいです。作中に登場する講座は実際に僕がかつて通っていた「宣伝会議コピーライター養成講座」での出来事をベースに書いているのですが、参加当時の卒業制作課題が「東急ハンズの広告コピーを考える」という内容で。
ああいったホームセンター、小売店は裾野が広く、キャッチコピーを考えるにあたっても色々な切り口を内包しているので、課題を考えるのが楽しかった記憶があります。今回は「東急ハンズ」そのままだとよくないと思ったのと、より「購買体験」の本質に近く、かつ近年課題も多い業態ということで「百貨店」を題材に選びました。
――うえはらさん自身は百貨店について、どのように考えていますか。
うえはら:「自分の物を買う場所」というよりも誰かに贈るものを買いに訪れる場所、というイメージ。本作を描くに当たり、実際にコンシェルジュさんの話も聞きに行ったのですが、担当してくださった方の見識も深かったですね……。「自分では知ることのできない奥深い情報に触れられる」という特徴も強調されました。
――本話(48話)から51話までで色々なプレゼンを描いていますが、このアイデアはすべてご自分で考えられたのですか?
うえはら:こちら、実は半分くらいは自分で考えたのですが、もう半分は当時講座で一緒だった同期のコピーライター2名の方が当時書かれていたコピーを、ご本人から許可を得て使わせて頂きました。
現在おふたりともコピーライターとして活躍されているのですが、そんな彼らの書いた素敵なコピーを作中に使わせていただけて嬉しかったですね。久しぶりに連絡を取るきっかけにもなり、漫画を描く楽しさに触れた気がします。
――プレゼンとコピーライティング能力のバランスについて、現在はどう考えていますか。
うえはら:コピーライター時代の僕は、どうしてもプレゼン上の技巧に凝りがちな人間だったんですよ。だから本当はもっと内容の方に時間を割くべきだったなと後悔しています。
一方で漫画制作に関しては、作品の内容に目が行きがちでプレゼンの方法(=読者にいかに届けるか)を若干おざなりにしがちなので、そちらをちゃんと考えたいなと。
――この4話を通じて、うえはらさん自身が意識して描いた点は?
うえはら:「広告制作において、明確な正解はない」ということです。正解はひとつとは限らない、とも言えるかもしれません。これは僕がコピーライター養成講座に通って一番びっくりしたことでもあって。
実際の講習には講師の方が4人いるのですが、評価するコピーがそれぞれバラバラだったので「あ、この業界にわかりやすい正解はないんだな」という学びが目からウロコだったように記憶しています。
――構想に時間がかかりそうですが、苦労はありませんでしたか。
うえはら:苦労しています(笑)。特にこのコピーライター養成講座編はそれぞれの登場人物のプレゼン案を全部考えないといけなかったので更新頻度が落ちてしまいました……。更新を楽しみにしてくださっている皆さんには申し訳ない気持ちです。
――今後『ゾワワの神様』はどう描いていきますか。他の展望などもあれば併せて教えてください。
うえはら:これまでは主人公が先輩社員や周囲の方の言葉を聞いてまわる「狂言回し」のような立ち位置でしたが、そろそろ彼自身にも成長してもらいたいと思っています。彼の成長のストーリーを軸にしたエピソードを厚めに書いていければ。