ゴマちゃん達の物語がついに完結! 『青少年アシベ』原作者と二次創作者による“夢の続編”が生まれた背景

 時代を超えて愛される名作『少年アシベ』。その登場人物たちが高校生になった姿を描いた青春ストーリー『青少年アシベ』が完結を迎え、2月27日には最終巻となるコミックス第9巻が発売された。

 『少年アシベ』の続編ということはもちろん、作者・森下裕美氏が原作と構成を、長年アシベを愛し二次創作を描いていた笑平氏が作画を務めたことでも大きな話題を呼んだ本作。

 原作者と二次創作者がタッグを組むという、業界でもあまり類を見ない試みの裏側にはどんな出来事があったのか?両氏にメールインタビューを依頼したところ、知られざる連載の裏側や思い出、特に好きなエピソードなど、『青少年アシベ』への想いをテキストで綴ってくれた。前半に森下裕美編、後半には笑平編を掲載。最後までお見逃しなく。

「自分の手ではできない、実験的な表現ができた」森下裕美が感じた手応え

――完結おめでとうございます。まずは今の率直なお気持ちを教えてください。

森下裕美(以下、森下):高校生活3年間を想定して作る計画でしたので、終わりは卒業式にしようと決めていました。まさに卒業ですね。笑平さんに出会ってから、この3月でちょうど8年になります。

――『青少年アシベ』がスタートしたきっかけは、森下先生が二次創作としてアシベを描かれていた笑平先生を見つけたことだったと過去のインタビュー記事で拝見しました。業界ではあまり類を見ない試みだったかと思いますが、連載をスタートさせるまでの裏話をお聞かせいただけますでしょうか?

森下:最初の仕事は、ネームやキャラクターの設定を詰めるといった漫画のプレゼン準備。いかに編集部の方にやりたい漫画をうまく説明して、連載に持っていけるかどうかでした。

 それで、2017年に双葉社の担当さんから笑平さんに連絡してもらい、会うことになりました。どうせならアシヤ水族館のモデルにする予定の「しながわ水族館」で待ち合わせしようという話になったんです。

 約束した3月3日はちょっと寒くて。水族館の入り口で担当さんと笑平さんが私を待っていてくれたのですが、笑平さんの第一印象は「泊まりなのに荷物少な!」でした。その後、一緒にフワフワとクラゲ見たり、アザラシ館で写真撮ったり…。これが、ふたりで『青少年アシベ』の輪郭を作り始めた最初の1日でした。

『青少年アシベ』1巻 P029より(©森下裕美・OOP・笑平/双葉社)

――ユミコちゃんが腐女子になっているなどの新たな設定が盛り込まれている一方で、「博愛固め」など 『少年アシベ』 時代の細かいネタが散りばめられており、個人的にこのバランスをとても楽しみに拝読しておりました。新旧の設定を考える上で大切にされていたことを教えてください。

森下:小学生から高校生へ、この時間経過にともなう“成長”です。時間が経つことによって、新しい家族や人間関係が形成されていきます。例えば、『青少年アシベ』で新たに登場したスガオの妹・アミル、訳アリで別々に暮らしてたおじいちゃん・阿南姿は、新しい家族と人間関係ですね。ゴマちゃんも大きくなって、水族館で家族ができました。まぁ、アザラシを拾って、アパートで育てていること自体ありえませんが、それぞれの“成長”ということを考えればどれも想像しうる未来かと思います。

――森下先生がネームを、笑平先生が作画という2人体制で1つの作品を制作していくにあたり、色々な出来事があったかと思います。森下先生がマンガ家として新たに得た気付きがありましたら教えてください。

森下:全部です。笑平さんが描くアシベたちを想像して、ネームを描いていました。そして、いつも笑平さんはそれ以上の仕事をしてくれます。掲載された『青少年アシベ』を見て毎回しみじみ喜んでいました。

――1~9巻のなかで特に気に入っているシーンやセリフを教えてください。 

森下:3巻後半から4巻に続くネパール編「ネパールへの道」です。正しいネパールを描きたくて、NPO法人「YouMe Nepal (ユメ ネパール)」代表のシャラド・ライ君を訪ね、ネパールについて色々教えていただきました。

 例えば、ネパールのライ君の実家に帰るまでに空港から3日かかること。でもヘリなら2時間であること。そして、食べ物や風習、身分制度や学校のこと…。「国を良くするために勉強してるのに、差別なんてしてられないのデス」穏やかながら生半可に生きてない、ネパール魂に触れられました。

『青少年アシベ』3巻 P140〜141より(©森下裕美・OOP・笑平/双葉社)

――森下先生ご自身にとって本作はどのような作品でしたか?

森下:自分の手ではできない、実験的な表現が多々できました。新しい体験です。

――最後に読者の方々にメッセージをお願いします。

森下:全国のゴマラー様、ありがとうございます。

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