『秘密 -トップ・シークレット-』に魅了される理由 サスペンスの根底に流れる人間賛歌

 毎週火曜22時から放送中の『秘密〜THE TOP SECRET〜』(カンテレ・フジテレビ系)。科学警察研究所の法医第九研究室、通称“第九”を舞台に、死者の脳を特殊なMRIスキャナーにかけ、生前の記憶を取り出すMRI捜査によって難事件を解決するドラマが反響を呼んでいる。

 原作は清水玲子の漫画『秘密 -トップ・シークレット-』(以下『秘密』)と『秘密season0』(以下『season0』)(白泉社『MELODY』連載)。前者は第15回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞するなど、名作の評価を確立している。

 『秘密』は、これまでも映像化が試みられてきた。2008年にアニメ『秘密〜The Revelation〜』(日本テレビ系)を放送、2016年には生田斗真主演による映画『秘密 THE TOP SECRET』が公開されている。何度も企画が立ち上がり、ついに実現したドラマ版は、キャラクターの再現度の高さが話題になっており、オリジナルの世界観を尊重した仕上がりで原作ファンからも好評だ。なぜ私たちは、これほどまでに『秘密』に惹かれるのだろうか? 本稿ではその秘密を探りたい。

“バディ”へと成長していく薪と青木

 まず、作者の美意識が貫かれた世界観とキャラクターが挙げられる。少女漫画としては異例の高い頻度で人体と臓器の描写が登場する本作において、グロテスクさを緩和しているのが流麗な筆致である。遺体の損壊状況や血の飛び散り方が事件現場の凄惨さをリアルに伝える一方で、人物は徹底して美しい。その象徴が主人公で第九室長(『season0』では科警研所長)の薪剛だ。

 薪は少年のような相貌と鋭い眼力を備えた天才肌のキャラである。薪の捜査に臨む方針は妥協を許さないもので、部下に対する態度は厳しい。しかし、ふとした瞬間に見せる弱さや孤独、深い苦悩を知るにつれて、読者は薪を実在の人物のように身近に感じるようになる。あやうさをたたえた薪を表現するのに、中性的でイノセントなビジュアルは効果的だ。薪の信念、困難に対処する強い意志が物語の中心軸を担っている。

 第九の新人として薪とMRI捜査に当たるのが青木一行である。身長189センチの青木は航空機操縦免許を取得しており、そのことが後のエピソードでも生かされる。青木の配属は薪にとって大きな意味があった。青木は、薪の東大の同期で親友の鈴木克洋をほうふつとさせる外見をしているが、もちろん別人である。青木は端的に言うとカタブツだ。薪に憧れて第九に入ったものの、ヘマをする青木は薪に叱咤され、無理難題を押し付けられる。

 一方の薪は鈴木を失った傷を抱え、葛藤に苛まれている。青木は狂気の淵に立つ薪を抱擁し、自らも消えない苦しみを背負いながら、事件解決に向けて奮闘する。上司と部下を超えてバディになっていく薪と青木の関係の深まりは『秘密』の見どころの一つである。

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