道重さゆみの「カワイイ」はずっと残る アイドルライターに聞く、その普遍性と“いま読むべき写真集”

 元モーニング娘。の道重さゆみが1月19日、自身の公式ブログを更新し、今夏に開催予定のコンサートツアーを最後に芸能活動を引退することを発表した。

 2003年に第6期生としてモーニング娘。に加入し、リーダーとして再ブレイクを担った道重。『アイドル楽曲ディスクガイド』(アスペクト)の編者であり、ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」を主催してきたライターのピロスエ氏が、アイドルとしての特殊性を振り返る。

 「道重さんはデビュー当時、同期の藤本美貴さん、亀井絵里さん、田中れいなさんと比較して、歌もダンスも決して上手いとは言えませんでした。パート割りももらえず、後列メンバーとして過ごしましたが、2007年以降バラエティ番組で活躍し、<私は(極度に)カワイイ>と訴え続けるナルシスト&毒舌キャラとして、一般にも知れ渡る知名度と存在感を獲得していった。アイドルがカワイイというのは大前提ですが、それをデフォルメして打ち出した自己演出能力が素晴らしく、いま振り返れば“あざとい系”のような人気ジャンルの走りでしたし、近年のアイドルシーンにおいては、バイラルヒットになったCUTIE STREET『かわいいだけじゃだめですか?』や、FRUITS ZIPPERが掲げる“NEW KAWAII”にもつながっていると思います」

 道重はグループ卒業後、ソロ活動でも多くのファンを魅了し、業界内にもファンの多い“アイドルズ・アイドル”だった。

 「業界内のファンとして代表的なのは、大森靖子やヤバイTシャツ屋さんのありぼぼです。ソロで活動再開後、この二人には楽曲提供を受けており、一緒に軽井沢旅行に行くなど交流を温めました。ファンあるいはオタクとビジネスパートナーの境界を超えて共に作品を作っていくーーという珍しいアイドルで、同じく山口県宇部市出身ということもあって、オタクの視点を活かしながら名作を再構築している庵野秀明と重なるところもあるのかなと思っています」

 引退を発表するブログには、2023年12月に診断を受けた強迫性障害についても綴られている。ピロスエ氏は、「ファンには思い当たる節があった」として、道重の苦悩に想いを馳せる。“ナルシスト&毒舌キャラ”とは裏腹に、仕事に対して過剰なほどのこだわりと繊細さを感じさせるエピソードが少なくなかったという。

 「例えば、2018年に行われたファンクラブのバスツアーで、参加者に配布される手描きのしおりに、小さな印刷ミスがありました。誰も気にしない程度のものだったそうですが、その後のライブMCで、道重さんは涙ながらに謝罪。後日、印刷し直したものが届けられたといいます。また、2022年2月にはグッズのスマホリングにウサギのオリジナルキャラ“さゆうさ”を描くことになり、納得がいかず140回も描き直したことを明かしている。こうしたエピソードが引退につながっているかはわかりませんが、大変なことが多かったろうと思いますし、ファンとしても“ひとまずゆっくり休んでまたアイドルとして活動してほしい”と軽々しく言うことはできません。ただ、道重さんはアイドルという文化が好きで、プロデュース能力も高いと思うので、たとえばプロデューサー等の裏方スタッフという形でアイドルとかかわるという未来もあり得るのかな、と思いますね」

 アイドル・道重さゆみの活躍を振り返る上で、ピロスエ氏は最後にいま読みたい2冊の写真集をピックアップしてくれた。

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