岩谷翔吾、初小説『選択』で特殊詐欺を描いた理由 「足を踏み外した人の生にも救いはあるんじゃないか」
■三浦しをんから学んだこと
――そんななか、亮の幼馴染で、もう一人の主人公である匡平の存在がずっと謎めいていますよね。かつて歩道橋から飛び降りようとしていたところを亮に救われた匡平が、亮と同じように孤独だったはずの彼が、物語にどのように関わってくるのかというのも、読み進めるトリガーの一つでした。
岩谷:実をいうと、匡平がどんな人間なのか、僕自身もずっとつかめずにいたんです。亮は、流星だったらこんなふうに演じるんじゃないか、こういうふうにセリフを言うんじゃないか、と芝居プランを想像することでふくらんでいったんだけど……。でもだんだん、描かれていないだけで、匡平がいちばん葛藤しているんじゃないかと思えてきたんですよね。最後に彼は、ある選択をくだすんだけど、亮を傷つけるだろうその一歩を踏み出すのは、とても勇気のいることだったはず。でもその勇気をくれたのは、かつて自分を救ってくれた亮で……。
――ああするしかなかった、という納得感のあるラストでした。
岩谷:そうですね。思い描いていたラストにたどりつくためには、その選択が必要だったのだなと思い、僕も筆をおきました。途中、亮ひとりを主人公にすることも考えたのですが、二人を軸にしてよかったと今は思います。
――岩谷さんは、人生の選択で後悔していることはありますか?
岩谷:ある、というか、後悔のほうが心に残りやすいですよね。選択を間違えたときの記憶のほうが、鮮明に残り続ける。人間って不思議ですよね。いいこともたくさんあったはずなのに、むしろそっちのほうが多いはずなのに、くよくよすることばかりを思い返してしまう。でもだから、この小説を書いたのかもしれません。後悔しない人間なんていないし、未練も間違いも全部ひっくるめて、今の自分をつくりあげてきたんだって思いたいから。この小説を書くことで、弱い自分や過去を乗り越えようとしたのかも。だからこの小説を読んだ人も、自分の選択を責めない気持ちになればいいなと思います。
――今回、三浦しをんさんが推薦コメントを寄せていますが、三浦さんと交流するなかで学んだことってありましたか?
岩谷:それはもう、全部といっていいくらい、学ばせていただいています。四年前、プロットができたころから、しをんさんには読んでいただいていたんですよ。初歩的な技術を指導していただいたのはもちろん、細かいところまで読み込んでメッセージをくださるので、お守りのように大事にしながら書き続けていました。
――印象に残っている言葉はありますか?
岩谷:やっぱり、書き始めた当初は、僕も気負っていて。かっこつけた文体にしてしまっていたんですよね。でもしをんさんが褒めてくださるのはいつも、僕が気負わずに書いた文章で、「心が表れていました」とおっしゃってくださった。変にごてごてと飾り付けする必要なんてなく、ただ心の底から生まれるままに、素直に書けばいいんだと思うようになったら、一気に筆のスピードが速くなって。
――だから、最初の一行も生まれたんですね。
岩谷:そうですね。いい意味でハードルを下げてもらえたというか、自分らしく書こうと思えたのは、ものすごくありがたかったです。しをんさんの文章って、メール一つとっても、あたたかみに溢れているんですよ。誰にも書けないあの文章も、きっとしをんさんの心の底から湧き出ているものなんだろうな、って。僕が言うまでもないことですが、本当に偉大な作家さんだと尊敬していますし、コメントを寄せてもらえて嬉しかったです。
――この小説は、どんな人に読んでもらいたいですか。
岩谷:今、迷いの岐路に立っている人とか、あのときああしていればよかったと後悔を引きずっている人に。仕事も、恋愛も、人間関係も、全部ひっくるめて、生きることに前向きになってもらえたらいいなと思います。あと、書き上げた小説を流星に見せたら、あるメッセージをもらったんですよ。それが、ものすごくよくて。流星がいちばん伝えたいことなんだと思ったから、その言葉をほとんどそのまま、小説のなかに忍ばせました。多少は、前後のかねあいで調整していますけど、流星の言葉そのままなので、たぶん読む人が読めば「浮いているな」って気づくはず。ぜひ、探してみてください。
■書籍情報
『選択』
著者:岩谷 翔吾
原案:横浜 流星
価格:1,760円
発売日:10月10日
出版社:幻冬舎
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