【漫画試し読み】雨穴『変な絵』コミカライズでも大人気 9枚の絵に隠された謎、あなたは解ける?
■戦慄のスケッチ・ミステリー、その内容とは?
「それではこれから一枚の絵をお見せします」
大学の講義室、心理学者がスクリーンに映したその絵は、11歳の少女が描いた、一見何の変哲もない愛らしい作品だった。しかしそれは、母親を殺害して警察に補導された“A子”の精神分析のために行なわれた「描画テスト」で生まれた一枚で、複数の違和感があるという。自らが担当した診断のポイントを学生たちに伝えた上で、心理学者は言う。
「今ではA子ちゃんは幸せなお母さんになっているそうです」
そんなシーンから始まる漫画『変な絵』(原作 : 雨穴/画 : 相羽紀行、双葉社)は、ネット発のマルチクリエイターで、今では押しも押されもせぬ人気ホラー作家となった雨穴の同名小説をコミカライズした話題作だ。処女作『変な家』に続くシリーズは累計100万部を突破しており、「ミステリー小説のファン」という範囲をはるかに超えて、多くの読者を戦慄させてきた。コミック版も発売1週間で「大重版」が行われる人気ぶりで、さらにファンを増やしている。まずはその第一話を読んでいただきたい。
コミック『変な絵』第1話を読むには画像をクリック
「絵」にまつわるミステリーが一つの事件につながっていく衝撃
講義の後、学食で腹を満たしていた佐々木は、オカルトサークルの後輩である栗原に声をかけられる。そこで紹介されたのが、1年半前に更新が止まったブログ「七篠レン 心の日記」だ。最後のポストは最愛の妻に宛てた「一番愛する人へ」。「3枚の絵の秘密」に気づいてしまったこと、許すことはできないが、それでも愛し続けるという意志を伝えるとともに、更新停止を宣言する内容だった。佐々木はブログを最初からたどり、「絵」に隠された秘密を紐解いていくことになる。原作もコミックもまだ読んでいない人のためにネタバレは控えるが、その真実に大きな衝撃を受けることは間違いない。
「絵」自体がそのまま伏線になっているため、佐々木とともに考察を進め、裏切られるのが本作の楽しみの一つだ。先のブログに投稿されていた『風に立つ女の絵』をはじめ、消えた男児が描いた『灰色に塗りつぶされたマンションの絵』、山奥で見つかった遺体が残した『震えた線で描かれた山並みの絵』など、9枚の奇妙な絵にはそれぞれに隠された真実があり、それが思わぬ形で一つの事件につながっていく。緻密かつダイナミックなストーリーは、背筋が凍るとともに痛快でもある。
原作の小説版でも「絵」は掲載されており、文字だけの小説とは違うビジュアル的な楽しさがあったが、コミカライズ版はその魅力をさらに深めている。作画を手がけるのは、人気サスペンス漫画『生徒死導』で知られる相羽紀行。原作ファンにとってはリアリティと緊張感のある作画がイメージ通りで、物語の鍵を握る「絵」に対する気づきを可視化しつつ、真実に至る衝撃とカタルシスを強調している。原作で結末を知っている人も、間違いなく楽しめる仕上がりだ。
『変な絵』は9枚の絵にまつわる戦慄の“スケッチ・ミステリー”であり、そもそもこれほどコミカライズに向いたヒット作もそうないだろう。まずは第1巻を手に取り、「絵」をじっくり眺めながら、大いに頭を悩ませていただきたい。
『変な絵』コミック1巻
【作品ページURL】
https://www.futabasha.co.jp/book/97845754407060000000
原作:雨穴 漫画:相羽紀行
発売日:2024年10月23日(水)
定価:本体700円+税
判型:B6判
ISBN:9784575440706