「カプセルトイショップ増えすぎ問題」は解決できる? 谷頭和希が話題書『パークナイズ 公園化する都市』を糸口に考える
公園から都市の未来を考える
さて、冒頭の話に戻ろう。爆増するカプセルトイショップの話だ。
「公園化」の発想を使えば、ショッピングモールに空いた空きテナントも、もしかすると「公園」にすることができるのではないか。もちろん、カプセルトイショップにするのも活用方法の一つだが、そうなるとその空間は「カプセルトイをする場所」にしかならない。しかし、せっかくそこに生まれているスペースを活かして、また異なる可能性を模索することができるのではないか? あるいはカプセルトイショップの一角をもっと人々が集う場所にすることができるのではないか? 「カプセルトイショップ×公園」だ。
全国を歩いていると、こうした「空きスペース」に出くわすことが多い。駅前のシャッター商店街は驚くぐらい人がいない、広大なスペースが広がっているし、郊外に出れば空き家だって増えている。都市部への一極集中と人口減少がこうした「空きスペースの創出」に拍車を掛けているが、本書の提示する「公園化」なる概念は、そこからどのように新しい都市空間を作るのかのヒントを与えてくれる。
本書のあとがきで、OpenAの馬場正尊は「近代が100年かけてつくってきた都市の骨格に対し、僕らはどう付き合えばいいのか。その探求のプロセスでもある」と本書を表現している。近代の都市空間は、空間に一つの「意味」を与え、なるべく機能的に都市を設計しようとしてきた。カプセルトイショップだってそうかもしれない。そこはカプセルトイが置かれることによって、一つの「意味」が与えられる空間になった。しかし、一つの機能しかなければ、その空間は、カプセルトイが誰の興味も惹かなくなったらそれでおしまいだ。ガソリンスタンドだってソーラーパネルだって、すべて「機能」のために作られているけれども、それらがさまざまな要因で終わりを迎えると、それは「機能の廃墟」になってしまう。もしかすると、現在の都市とはそんな「機能の廃墟」が積もり積もっている空間なのかもしれない。
だとすれば、そんな廃墟の中から、そのスキマを縫うようにして私たちは新しい都市空間を作っていく必要がある。そのヒントこそ、「公園化」にあると馬場は考えているのだ。本書の視座は、きわめて具体的な都市空間に根差しながら、より大きな「新しい都市の姿」にも向いている。その点で、「公園」だけに留まらない、広く「都市」全般に興味を持つすべての人におすすめの一冊である。