「リブレ」「大洋図書」が牽引する「BL」事情、次なる覇者は? 識者が解説する人気出版社の業界地図

 一大ジャンルとなった「商業BL」。その人気は国内だけに留まらず、海外でも多くのファンを獲得している。商業BLの市場が拡大するに連れ、出版社ごとの特徴多様化。バラエティに富んだレーベルが次々に生まれている。

 そこで株式会社サンディアスが運営するBL情報サイト「ちるちる」編集部に、気になる昨今のBLレーベル事情や人気ジャンルについて聞いた。日本のみならず、海外も含めた現在の、BL事情をマッピングしていく。

◼️映像化の人気作揃う「リブレ」と「大洋図書」がBL界牽引 

さんかく窓の外側は夜 1(リブレ)

 ちるちる編集部の調査によると、現在のBLレーベルとして先頭を走るのは、「ビーボーイコミックス」「ビボピーコミックス」などのレーベルを持つ出版社リブレ。2024年上半期だけで約70冊を刊行し、BL業界を牽引している存在だ。『抱かれたい男1位に脅されています。』や『さんかく窓の外側は夜』など、映像化も果たした人気作も輩出している。

 特徴は、キャラクターの個性が強くラブコメ要素も含まれた作品が多いこと。BLレビューサイト「ちるちる」会員らによるレビューで高評価を得た作品が最も多いことから、「熱心なBLファンから今最も人気を得ているレーベル」だと言えるという。

オールドファッションカップケーキ(大洋図書)
囀る鳥は羽ばたかない 1 (大洋図書館)

 
 そんなリブレと双璧をなすのが「CRAFT」「ihr HertZ」などのレーベルを持つ大洋図書。『囀る鳥は羽ばたかない』『オールドファッションカップケーキ』など、こちらも映像化されている作品が多く、知名度が高い作品が揃う。リブレと比べて、ストーリーがシリアスかつ重厚な作品が多いのが特徴。リブレ、大洋図書はBLファンが愛する王道の代表格で、コアなファンからの人気が高いという。

◼️台頭する新勢力。エモさやユニークさで差別化

 近年台頭してきたのが、シュークリームが編集を手掛けるレーベル「on BLUE」(祥伝社)や「from RED」だ。既存のBL作品とは毛色が違う“エモーショナル”な描写が持ち味で、若年層やライト層の人気も高い。オシャレな雰囲気で、レーベルにファンも着いている。さらに、一巻完結がベーシックな商業BL界で、めずらしく「長期連載」を前提とした作品が多く、ストーリー重視で長く楽しめるという点も新しい層から人気を博している理由の一つだという。

 また、竹書房も独特の雰囲気でコアな人気を誇る。レーベル「Qpaコレクション」「麗人セレクション」などは、過激な性描写やエンタメ色が強く、ユニークな作風が持ち味だ。ひとくちに商業BLといっても、さまざまなニーズにあわせて細分化していると言えそうだ。

ⓒSANDIAS

◼️日本の人気ジャンルに変化。「コンプレックスの昇華」に焦点

 さらにちるちる編集部は、国内BLにおけるブームは三ヶ月ごとに入れ替わると言ってもいいほど、移り変わりが早いと分析。これまで主流だった学生ものより、社会人ものが中心になっているという。人気テーマの傾向は「一口に人気のジャンル、テーマと言っても難しい」としながらも、例の一つに“コンプレックス”を挙げた。

 サンディアスが開催した「第15回 BLアワード2024」にて一位を獲得した『40までにしたい10のこと』(リブレ)や、前述の『オールドファッションカップケーキ』(大洋図書)などは、年齢を重ねてコンプレックスを抱えている“受け”が、若くてイケメンな“攻め”に求愛されて、劣等感を解きほぐしていく……という共通のテーマを持っている。

 この理由を「多くのBLファンがコンプレックスを昇華させてくれる関係性に萌えたのかもしれない」と話す。漫画は激しいストーリーより、内面の機微を描く繊細な作品が人気である一方、小説はファンタジーものが主流なのだそう。

『40までにしたい10のこと』(リブレ)

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