一点の曇りもなく、女乱馬にもあかねにも想いを寄せるナルシスト

　『らんま1/2』の魅力といえば、男姿と女姿の乱馬と、その周りのキャラクターたちが巻き起こす様々な恋模様とユニークすぎるバトルシーンだが、九能は女姿になった乱馬とあかね両方に恋をして、時には男姿の乱馬に戦いも挑む、まさにストーリーを動かすキーパーソンと言えるだろう。

　当初、九能は天道あかねに想いを寄せていたが、女姿の乱馬に一目惚れしてしまい、以降は2人の美女どちらを自分が選ぶかで（この時点でかなりの自意識過剰だが）苦悩し、時にはあかねに結婚を迫ったり、時には女乱馬に薔薇の花をプレゼントしたりするようになる。

　2人の女性にアプローチした上、その女性たちも当然自分に気があるだろうと考えていること自体、かなりのナルシストぶりなのだが、彼の勘違いぶりが最も顕著なのが作品当初のあかねへの対応だ。あかねが学校中の男子から憧れ想いを寄せられる存在だったため、九能は学校中の男子生徒たちに「天道あかねと付き合いたかったら、彼女と戦って勝て」という提案を行ったのである。そのため、あかねは乱馬が九能に勝つまで、毎朝通学時に高校中の男子生徒たちに戦いを挑まれるはめになったのだ。あかねにとってはかなり迷惑な話だと思うが、そうした振る舞いすら許されてしまうのが九能帯刀というキャラクターなのだ。

　自分の恋心のために、主人公である乱馬やヒロインのあかねを振り回し、突然登場しては自由気ままに戦いを挑む。傍若無人だが、どこまでもマイペースで自分に正直な九能帯刀というキャラクターこそ、本作の影の主役なのかも知れない。