『機動警察パトレイバー』リバイバル上映も満席状態ーー35年経っても支持される理由は?

 さらに言えば、高田明美のキャラクターデザインの雰囲気や、メカ描写の緻密さも、図らずも現在のトレンドに乗ったものになっている。高田によるキャラクターデザインは、現実的な物語である『パトレイバー』のリアリティラインに沿った尖りすぎていないものになっており、普遍的な魅力のあるデザインである。一方で、登場人物の服装などは80年代終盤の雰囲気を色濃く残しており、この当時のファッションは現在改めて魅力を再確認されている。普遍性のあるキャラクターデザインと時代を感じさせるディテールの組み合わせは、現在の目で見てこそキュートさが理解できるものだろう。

 メカ描写に関しても、当時を知らない世代にとっては新鮮に映るものである。80年代終盤からのおよそ10年ちょっとの間は、セルアニメでのメカ描写の絶頂期にあたる時期だ。『パトレイバー』のみならず野心的で緻密なロボット・メカが数多く描かれ、ロボット自体のアクションに加えて内部機構やコクピットまで含めた高密度な描写は、現在でも多くのファンを惹きつけている。特にSNS上では、この時期のロボットアニメの特に作画の密度が濃い部分を切り抜いて編集したショート動画が数多くシェアされており、当時のメカ描写が現在のネットユーザーにとっても新鮮かつ魅力的なものであることを示している。

 冒頭から濃密なメカ描写が盛り込まれている『劇パト』は、セルアニメでのロボット表現に関しても見どころが多い。暴走したレイバーを取り押さえるイングラムや「方舟」の内部での戦闘シーンは高密度に作画されたロボットアクション独特の快楽に満ちており、ずっと見ていたくなる魅力がある。このあたりのメカ描写の濃度も、当時を知らない世代からはフレッシュに映ったのではないだろうか。

 ということで、『劇パト』のリバイバル上映が話題となった背景には、作品自体が持つ力に加えて、現在のトレンドに乗った作品だったから、という理由があったように思う。35年という時間経過は、時代が一周して再度「こういうノリ、いいよね」というムードが醸成されるほどの長さなのである。このトレンドに乗って完全新作の『機動警察パトレイバー EZY』がヒットとなるかどうか。2026年のプロジェクト始動が待ち遠しいところだ。

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