「次にくるマンガ大賞2024」Webマンガ部門1位『ふつうの軽音部』これまでの“バンドもの”とは何が違う?
“ふつうじゃない”キャラクターたちの魅力
とはいえ、ちひろ自身は軽音部内のドロドロとした人間関係にほとんど関わらない。部活内の中心人物ではなく、みんなの輪から少し外れている立ち位置なので、ゴシップを外から眺めているような感覚だ。だからこそ部員たちの恋愛トラブルもどこか他人事で、皮肉やユーモアがこもった描き方となっている。リアリティがあるのに読者は気楽に笑っていられる、独特の読み味だ。
また、同作はそもそも軽音部の“ふつう”の日常を描くだけのマンガでは決してない。ちひろを取り巻くキャラクターたちが、いずれも尖った個性を持っているからだ。
筆頭と言えるのが、初期からちひろのバンド仲間として活躍する女子の幸山厘。とあるきっかけからちひろの才能を確信し、「神」として信仰を注ぐようになる……という変人で、まるで諸葛孔明のような知略によって人間を動かしていく一面もある。
ほかにも毒舌でひねくれ者の藤井彩目、“厨二マインド”を体現するような男子生徒のヨンスこと田端陽一など、にぎやかな面々が物語を彩っている。
どこにでもいる凡人たちの部活模様にも見えるし、どこにもいない変人たちのにぎやかな青春にも見える……。『ふつうの軽音部』はそんな不思議な世界観を楽しめる作品なので、ぜひ一読してみることをオススメしたい。