【漫画】妖怪たちをキュンとさせる無垢な少年、意外すぎる正体はーー夏に読みたいSNS漫画『後ろ隠れさんとぼく』

「後ろ隠れ」のデザインはどうできた?

――そもそも『後ろ隠れさんとぼく』を制作し始めた理由は?

坂野:昨年の春ごろにパキッとした陰影の付け方の練習を始めました。その延長線上で、実は少しだけ今と違う後ろ隠れさんと守くんの短編を描きました。個人的に人外と少年が仲良くなっていく物語が大好きなので、「短編だったものにしっかりストーリーをつけよう」と思い、昨年12月に本格的に『後ろ隠れさんとぼく』を描き始めました。

――人外と仲良くなる物語を描きたかったため、“少年と妖怪達の交流”を軸にしたと。

坂野:はい。また、妖怪が出てくる物語も好きで、『四谷怪談』や『雨月物語』などは学生時代によく読んでいました。怖いけれども悲しい過去を背負って怨霊や妖怪になってしまった、本来は優しかったはずのものを描いた作品に憧れがあったのかもしれません。ですので、妖怪の怖さよりも、優しさや人間と変わらない部分を出したかったため、「少年と仲良くなって“友達”になる」という展開にしました。

――時代設定や舞台はどのようにして決めましたか?

坂野:“子供が日常的に1人で少し離れた山まで遊びに行くことが珍しくない時代”として昭和40年代ごろを選びました。また、家の中にも町の道にも当たり前に妖怪がいて、小さい時からそれが当たり前で受け入れられていた環境として、舞台を小さな田舎村にしています。

――後ろ隠れは既存の妖怪を参考にしてデザインを考えたのですか?

坂野:とある海外アニメに出てくる不思議な生き物と、日本古来の妖怪を掛け合わせました。日本古来の“後ろ神”という幽霊は、本来一つ目の幽霊のような姿で人を留まらせるものですが、海外アニメに出てきたものは黒い影の見た目でただ後ろにいるだけです。ただ、「少年と仲良くならせるために怖さよりも愛嬌を優先すると、この2つを掛け合わせたほうが受け入れやすいのでは?」と思い、ミックスさせました。

――他の妖怪のデザインにも何かこだわりが?

坂野:日本古来の妖怪や、昔話・怪談話に出てくる妖怪を自分なりの解釈を入れてデザインしています。ただ、あまり崩しすぎないようには意識しました。

――坂野さんの中で特に気に知っている妖怪はありますか?

坂野:個人的には山童のわろくんがお気に入りです。山童はもともと河童なので、河童の名残である水かき、エラ、鱗を残しつつ、わろくんの場合は長いことその姿でいたために前歯が生えて陸に対応してきている姿にしました。山童は本来着物を着ていないのですが、人間になりたがったわろくんの気持ちを考慮して、“人に近い服装”に自然となっていきました。

作者お気に入りのカットは?

――ゆるふわな日常パートに癒される内容でした。日常パートを描くうえで意識したことは何ですか?

坂野:とにかく優しい物語にしたかったので、全編通してほのぼのした部分が印象に残るように、初めて会った時よりも笑顔を増やしたり、守くんも時にワガママを言ったりなど、仲を深めて友達になっていく時の距離感は意識しました。また、過去がどうであれ守くんの知っている妖怪達は明るく気さくな“今の姿”ですので、守くんの前であまり悲しい過去を話さないように意識したかもしれません。

――7話の帽子をかぶり、リュックを持っている守のビジュアルがとても可愛かったです。坂野さん自身、気に入っているカットは?

坂野:個人的には6話のわろくんの「すてき、みえる?」です。初めて会った時の嫌な笑顔の作り方をするわろくんとは違い、心から楽しそうにしている顔を描けてとても満足しています。また、細かい部分で言いますと、青頭巾に攫われた時の守くんの表情は、普段の子供らしい顔から一変させ、色気が出るように注力しました。

――8話で完結した印象ですが、続編制作の予定はありますか?

坂野:今のところはないです。続編を望む嬉しい声もいただいているのですが、守くんと後ろ隠れさんの物語では描きたかった部分が終わってしまいました。描くとしたら長さのために削ってしまった守くんのお父さんとお母さんのストーリー、妖怪たちが守くんに出会う前のストーリーになるかと思います。

――最後に漫画家としての予定を教えてください。

坂野:9月より本作の同人誌の電子版の配信を予定しています。機会がありましたらお手に取ってもらえると嬉しいです。

■坂野道さんのSNS
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