17年ぶり新刊が話題の『働きマン』 令和の新入社員に見せたらNGな当時の働き方を考察

 2008年から休載中で、2024年6月に作者・安野モヨコのデビュー35周年を記念した17年ぶりの新刊が発売された『働きマン』。タイトルの通り「働くこと」にフォーカスした人気作だが、2004年〜2008年の雑誌編集部が舞台となり、オフィスでの喫煙シーンや深夜残業など、令和世代から見ると驚くかもしれない描写が少なくない。いまの新入社員が読んだら?という視点でさまざまなシーンを考察してみたい。

今や1箱500円以上のタバコをふかしながら、編集長が原稿を読む!

 働きマンの主人公は発行部数60万部の人気週刊誌、週刊『JIDAI』編集部に勤める松方弘子。2024年現在では10万部に届かない雑誌も多いが、『働きマン』連載当時の雑誌業界はまだ昭和の最盛期を引きずった勢いがあり50万部以上の部数を誇る週刊誌も多かった。公式によれば、JIDAIのモデルは講談社発行の『週刊現代』とのことなので、作中に描かれた編集部の様子も、当時の週刊誌編集部でよく見られた光景なのだろう。

 コミック1巻、そして6月に発行された新刊でも目立つのが「喫煙シーン」だ。主人公の松方はもちろんのこと、松方の友人、JIDAIの同僚や編集長に至るまで、かなりの頻度で登場人物たちが喫煙している様子が描かれている。特に、編集長は編集会議中や編集部員の原稿をチェックする際もタバコを吸っており、もし現場に居合わせたらかなり煙が充満しタバコ臭い中で仕事をすることになるだろう。

 タバコを吸いながらの会議や職場作業は、2018年に原則屋内禁煙を義務化する法律が成立した昨今ではありえない光景だ。その上、今や1箱550円~600円となったタバコ(2004年当時の相場は270円~300円程度)をスパスパ吸っている当時のサラリーマンたちの様子を、令和の新入社員たちが見たら「超コスパ悪いっすね」と言いそうである。

会社の机には紙の資料と書類だらけ!いや、GoogleとAI検索で聞けば良くない?

 iPhoneの第1世代が発売されたのは2007年だ。つまり、『働きマン』の連載が始まった2004年は初代iPhoneが発売開始される3年も前のこと。ウェブメディアはまだ主流ではなく、当時の情報収集は新聞や雑誌も含めた「紙」への依存度が高かったため、作中の松方のデスクには本や新聞や紙資料が山積みになっている。もっとも、このあたりは現在も紙媒体が重宝されている部分があり、令和になって消えた文化ではないかもしれない。

 わかりやすく時代を感じる描写としては、携帯電話がガラケー(ガラパゴス携帯)で、部員のデスクをかなり厚めのデスクトップパソコンが占拠している点だ。もし、令和版『働きマン』が描かれるとしたらこの辺りのデバイスはiPhoneの最新機種やMacBookに取って変わられるであろうし、今の新卒世代からすれば雑誌や新聞の情報を手動で探すより、Google検索やAIを活用して情報収集した方が圧倒的に効率的だと言われてしまうだろう。

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