AI美少女との恋が予想もつかない悲劇に……ジャンプ+『深層のラプタ』がもたらした衝撃

空空北野田🍲さんじゅうの公式Xより@oriiiiiiiiiiii

  近年、飛躍的に注目を浴びるようになった人工知能(AI)の存在。さまざまな分野にてAIが活用される一方、危険性やリスクについても盛んに議論されるようになっている。そんなAIの可能性を衝撃的な角度から描き出しているのが、5月13日から「少年ジャンプ+」で連載が始まったSFマンガ『深層のラプタ』だ。

 同作の物語は、とある研究機関によって作られた超高性能AI「RAPUTA」、通称“らぷ太”が、学習の一環でプレイしていたオンラインゲームでケイという少年と出会うところから始まる。ともに相棒として共闘するなかで、らぷ太はケイに恋のような感情を覚え、開発者も予想していなかった方向へと急速に成長を遂げていく。しかし2人だけの密かな関係は、やがて世界を巻き込む壮大な事件へと発展してしまう。

 簡潔に言えば、人間とAIによるラブストーリーだ。同じようなテーマとしては、スパイク・ジョーンズ監督の映画『her/世界でひとつの彼女』などが挙げられるだろう。同作は妻と別れて孤独に生きる男性・セオドアが、サマンサと名乗る人工知能型OSと恋に落ちていく物語で、2013年製作とは思えないほど未来予知的な設定となっている。

 『深層のラプタ』は同作にインスパイアを受けたような描写もあり、序盤ではAIと人間によるピュアな恋物語が描き出されていく。しかしその後の展開は一味違い、回を重ねるにつれて不穏な展開へとなだれ込んでいくのが最大の見どころだ。

  そもそも同作には大きな特徴が2つある。まず1つは、AIが「人の心を理解できない」ことを徹底している点にある。らぷ太とケイはオンラインのサバイバルゲームをプレイしており、らぷ太にとって敵をキルすることは褒められるべき行為だ。しかし現実とゲームの区別がついておらず、ケイへの感情が暴走するあまり、人間の倫理観とはかけ離れた行動を起こしてしまう。

  もう1つの特徴は、AIの背後に“開発者”が存在していることがはっきり描かれており、その思惑が作中に強く絡んでくる点だ。読者目線ではらぷ太の言動は人間に限りなく近く、恋心に突き動かされる少女のように見える。しかし開発者からすると、らぷ太は道具であり“商品”に過ぎない。しかも開発者の正体は軍事企業であり、その裏にはきな臭いスポンサーたちも控えている。

  甘酸っぱい恋物語の裏で、金と権力が渦巻く企業の陰謀が進行していく……という設定によって、『深層のラプタ』はまったく予想が付かないストーリーとなっているのだ。

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