【漫画】深夜コンビニで働くわけありおじいさんの物語が100万部突破! 著者に聞く『島さん』の温かな魅力

川野ようぶんどう『島さん(6)』(双葉社)

 深夜のコンビニで働く、ちょっとわけありのおじいさんを描いた漫画『島さん』が、累計100万部を突破する大ヒット作となっている。7月25日には待望の第6巻が発売され、その人気はさらに加速しそうだ。

 実は背中に立派な昇り龍が彫られている島さんは、一見すると機械の操作もおぼつかず頼りなさげだが、いざというときにはどっしりと構えてトラブルを解決し、深い人情味にも溢れている。そんな島さんに魅了される読者が相次ぎ、瞬く間に人気作となったのである。令和のハートフル・ストーリーを描くのは、自身も長らくコンビニ夜勤のバイトをしていたという漫画家の川野ようぶんどう先生。同作に込めた想いと最新6巻の見どころについて、川野先生に話を聞いた。(編集部)

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自分自身はじめの頃よりも島さんが好きになりました

ーー100万部突破おめでとうございます。まずは今のお気持ちを教えてください。

川野ようぶんどう(以下、川野):ありがとうございます。読んでいただいた皆さまに本当に感謝しています。コンビニ夜勤のバイトをしていた期間が長くて今も漫画家というよりそちらの意識が強いので、長期的なドッキリを仕掛けられてるというか、起きたら全部夢だったんじゃないかと……ドキドキします。

ーー2020年の連載開始から100万部を突破する現在までを振り返って、大きく変わったことはありますか?

川野:連載開始の頃は読んでもらえるのか、楽しんでもらえるのか、不安でいっぱいだったんですが、読者の方から「島さんが好きです」と言っていただいて、自分自身はじめの頃よりも島さんが好きになりました。部数のことはあまり実感がないのですが、励ましの言葉が力になって頑張ることができているという実感はいつも感じています。

ーー特に思い入れのあるキャラクター、シーン、セリフを教えてください。

川野:第4夜「ヤネさん」のお話はとくに思い入れがあります。勝手にキャラクター達に引っ張られてゴールに連れて行かれるタイプのお話があって、これがそのはじめてのお話でした。第12夜「ひでさん」のお話も思い入れがあって、近くに住んでいる自分の叔父が脳出血で身体の麻痺という後遺症が残ったのですが、リハビリを懸命に頑張っていた姿と、当時のコロナで会いたい人に会えなくなってしまった状況への思いが重なってできた一編でした。

『島さん(1)』より

ーー島さんと彼を取り囲む人達の日常が温かい目線で描かれている本作。3巻のあとがきで「描いている時はその話の世界に入り込んでいる」と明かされていましたが、執筆中は島さん、子関くん、お客さん......川野先生はどの目線におられるのでしょうか?

川野:時々僕のことを島さんのように思ってくださる方がいて言いにくいのですが…、僕自身は器の小さい情けない男でして、その都度、子関くんだったりお客さん目線だったりしています。島さんはいつも大きい目線でみんなを見てくれていて、僕も話の最後に「島さん、あとはよろしく頼みます」という感じで無責任に島さんにバトンタッチしています……(笑)。

ーー作画のテクニックについてもお聞かせください。同僚たちやお客さんをそっと見守るような、島さんの優しい目線がとても魅力的だと感じているのですが、表情を描くうえでのこだわりはありますか?

川野:表情に関しては時間の許す限りトライ&エラーの連続で、とにかく気持ちを込めるということで自分なりにミリ単位の調整に四苦八苦しています。ベストを尽くしているつもりでも、あくまで『島さん』だけを見ての作業なので、あとになって漫画アクションで他の先生方の作品と一緒になっている自分の絵を見ると粗が目について愕然としてばかりです。………もっと頑張ります!!

ーー作家として実現したい夢がありましたら教えてください。

川野:許されるなら『島さん』を長く続けていきたいなあと思っています。少年時代の話とかもっと描きたいです。基本的な舞台はコンビニかもしれませんが、島さんの人生を丸ごと描けたら嬉しいです。それと、自分がバイトしていたコンビニにヘルプで入って、自分で『島さん』の単行本を納品、検品して売り場に陳列、お客さんへのレジまで打って渾身の「ありがとうございます!!」を言ってみたいです(笑)。

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