高橋悠治+坂本龍一による幻の名著『長電話』とはどんな本なのか? 1984年の実験的アプローチを読む

 坂本は書籍『坂本龍一のメディア・パフォーマンス』(フィルムアート社)に収録されたインタビューで「まだインターネットもないころですが、本というデバイスは閲覧性も優れているし、後ろから読んでも前から読んでもいいし、飛ばして読んでもいい。あるページを読んでいるときに、パッと目次を見ることだってできる。とてもアクセシビリティが高いメディウムなわけです」とコメントしているが、1984年当時の坂本のメディアに対するアプローチが具現化された最初の本が「長電話」なのだと思う。

龍 ね。で、同じように思ったのはさ、演技っていうのも、見られないと演技とは言わないじゃない。しかも、見られてるだけじゃなくて、見られて、それが何を表しているか、意味が伝わんないと演技じゃないじゃない。それは何か滑稽なしぐさをしているだけであってさ、伝わってない場合は。だから了解されないと演技とは言わないし、とてもだから言葉に近いなとは思ったね。
悠 そうすっとなに、作曲をしながらある種の演技を行ってるっていうわけ?
(演技と作曲)

 なんとなくページを開くと、こんな刺激的な対話が目に飛び込んでくる「長電話」。今回の復刊を機に、40年前に行われた二人の音楽家の自由で奥深い対話を気の向くままに楽しんでほしいと思う。

■書籍情報
『長電話』
著者:高橋悠治、坂本龍一
デザイン:日本デザインセンター 色部デザイン研究所
発行:一般社団法人坂本図書
発売:バリューブックス・パブリッシング
発売日:2024年8月30日(金)
価格:3,080円(税込)
頁数:225ページ
判型:四六判

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