集英社、講談社、小学館、それぞれの戦略とは? 「週刊東洋経済」特集に見る漫画出版の戦国時代
社長と言えば、集英社にとっては親会社の小学館も2022年に就任した相賀信宏社長の手腕が注目されているようだ。特集によれば、VIZ Mediaという小学館や集英社の漫画やライトノベルを世界展開している会社でキャリアをスタートさせた相賀信宏社長は、高いモチベーションを持って経営に取り組み、3DアバターやAR(拡張現実)といった新機軸の事業にも意欲を見せているらしい。
「ジャンプ」勢のような超人気作がズラリと並ぶ状況ではない点は講談社と同じだが、山田鐘人原作、アベツカサ作画『葬送のフリーレン』の人気は世界的。何より映画の最新作『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』が興行収入で過去最高の150億円に達した青山剛昌『名探偵コナン』があり、世代を超え国境も越えて人気の藤子・F・不二夫『ドラえもん』があってと超強力なタイトルが揃っている。
悲しい事態となった『セクシー田中さん』の問題が、新規のメディアミックスにどのような影響を与えるのかは不明だが、一方で青山剛昌の『YAIBA』や高橋留美子『らんま1/2』と言った往年の名作の再アニメ化が決まり、「週刊少年サンデー」連載作からも、ひらかわあや『帝乃三姉妹は案外、チョロい。』のアニメ化が決定した。「週刊少年サンデー」の連載には他にも、柳本光晴『龍と苺』や馬頭ゆずお『ロッカロック』など面白い漫画が並んでいる。こうした作品力を軸に、集英社のようなメディアミックス展開をどこまで仕掛けられるかで、講談社を挟み撃ちにするような局面も見られそうだ。
「週刊東洋経済」の特集では、強力なライトノベルを原作にメディアミックス展開を進めるKADOKAWAの戦略や、漫画部門を強化するマガジンハウスの取り組みなども紹介されている。漫画では最近、早川書房が「ハヤコミ」という名称で7月23日にコミックサイトを開設し、逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』やアガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』のコミカライズを掲載すると発表した。知名度がある刊行物なら漫画にすれば読んでもらえるといった判断で、成否によっては他の出版社にも動きが波及しそう。
そうした漫画出版の戦国時代において集英社、講談社、小学館はさらに先を行くのか。「週刊少年チャンピオン」の秋田書店や「まんがタイムきらら」の芳文社などもヒット作のアニメ化で追随していくのか。そうしたことを考えさせられる特集だったと言えそうだ。