【漫画】開戦前夜の帝都で“鍵屋”が暗躍? 特殊な技術にワクワクする読切漫画『LOCKER』

実際に鍵屋に取材した

――今回『LOCKER』を描いた経緯を教えてください。

ヒトミスナガ:3年ほど前にたまたまテレビ番組でやっていた鍵開けのコーナーを見て、「カッコいい」「この題材で物語を作りたい」と思ったことがキッカケです。ただ、以前に『錠前と鍵師』という作品を制作したのですが、自分の中では満足できる仕上がりにはなりませんでした。その後「もっと巧く描けないだろうか」と燻っていたのですが、その後いろいろ練り直して再構築したのが『LOCKER』になります。

――昭和初期を舞台に選んだ理由は?

ヒトミスナガ:昔は今よりもずっと金庫には価値があって重要視されていたと知りました。また、昔は鍵屋の特殊性の高い技術を有している専門職的な部分もあり、なにより軍と金庫の親和性も感じており、「それならば、きな臭い戦前昭和の舞台にしよう」と考えました。

――ちなみに本作を描くうえで金庫や鍵について勉強したのでは?

ヒトミスナガ:錠前や金庫の種類や特性などいろいろ調べました。大体の情報はネットで手に入るのですが、やはり「専門家に直接話を伺いたい」と思い、老舗の金庫屋さんに取材させていただきました。

――設楽どのように作り上げていきましたか?

ヒトミスナガ:設楽は「何を考えているのか解らない、どこか胡散臭くて怪しげな男にしよう」と意識しました。また、軍や味方をも平然と欺く策士なので、常に余裕な態度をブラさないように気をつけました。あとは「大人の男の色気も出したい」と思っていました。一方、岡安は設楽と対になるような実直、誠実、生真面目な堅物にしました。

――ただの鍵屋だった設楽でしたが、どんどん大きな国家の闇に巻き込まれる展開でしたね。

ヒトミスナガ:取材先の金庫店で「陸軍が特注で作らせた」という特殊な秘密金庫を触らせていただく機会があり、そこで“鍵屋が軍の機密を暴く”という内容が浮かびました。「どうせなら国家規模のスケールが大きなストーリーのほうがいいだろう」と思い、近代史を復習していた時にふと目にした“パール·ハーバー陰謀説”と絡めることが浮かびました。

――本作は設楽が軍人に「私に任せてくだされば~」と懐柔する際の表情がとても印象的でした。

ヒトミスナガ:目元や口角の角度にはこだわって描きました。描いている最中はついつい自分も設楽と同じ様に顔を歪めていたと思います。また、個人的には後半に進むに連れて設楽の表情が悪人っぽくなっていくのが気に入っています。

――今後はどのような作品を描いていきたいですか?

ヒトミスナガ:これからも懐古感が感じられるような作品を制作していきたいと思っています。現在は商業誌掲載を目標に作品制作をしており、誌面で見かけた際にはよろしくお願います。

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