【漫画】お気に入りのハンドクリームを落とした女子高生、本当に失ったものは? 愛らしくも考えさせられるSNS漫画

「周りの人はこの匂いが嫌かもしれない」

――『ハンドクリーム アンド ユーアーネェム』制作の経緯を教えてください。

田丸:今年に入ってからXで定期的にショート漫画を掲載していて、「たまには長い話を描いてみよう」と思って描きました。

――なぜ女子高生とハンドクリームの組み合わせの漫画を描こうと?

田丸:私が会社でいつもハンドクリームを塗っていて、ある日ふと「周りの人はこの匂いが嫌かもしれない」と感じました。ミントの香りだったんですけど、「実はこれは非常識な行為なのではないか」と。そこを起点として「自分の大切なものを拾って届けてくれたら、苦手な人でもちょっと好きになる」という別エピソードを付け加えて話を広げていきました。

――高校を舞台にした理由は?

田丸:「些細なことで人を簡単に好きになったり嫌いになったりする、10代特有の未熟な雰囲気を描きたい」と思ったからです。

――また、女子高生とハンドクリームだけではなく、SNS(鍵垢)という要素も加えられていましたね。

田丸:以前、とある芸能人の名前をいつも検索していたのですが、そのうち頭文字を打っただけで変換候補に出てくるようになりました。「もしこれが自分の嫌いな人の名前だったらどんな気持ちになるだろう」と考えたことが始まりです。そして、「嫌いな人の名前を何度も書くのは日記か鍵アカしかない」と思い、現代アイテムの1つとして鍵アカを取り入れました。

――ちなみに、田丸さん自身はハンドクリームに何かしらの思い入れなどありますか?

田丸:20代の時に勤めていた会社の話です。その時も仕事中にハンドクリームを塗っていたんですが、隣の席の先輩に「焼き芋の匂いしない!?」と声をかけられました。実際は本作と同じバニラの香りのハンドクリームだったのですけど、「美味しそうな匂いだね」と言ってくれて、今でもそれはすごく印象に残っています。

4ページごとに起承転結

――神崎と田中の2人はどのように作り上げましたか?

田丸:仕事場が駅前にあり、登下校する高校生をよく見かけるので、観察しながらそれぞれのビジュアルを練っていきました。神崎は今風の女子高生でふんわりと柔らかい雰囲気、対して田中はちょっとクールな優等生の容姿にしています。

――ハンドクリームを褒めていたのにハンドクリームのデザインを覚えていない友達にガッカリしたり、自分にとっては大切なものでも他人からすれば大したものではないという認識のずれにモヤモヤしたりなど、神崎の感情が丁寧かつ細かく描かれていました。

田丸:“ハンドクリームを失くしたくらいで同情してくれる人間などいない”というシビアな現実を表現したくて、作中後半では「友達がいても最後は1人」「誰も私になんて興味ないよね」と悲壮感のこもったセリフを神崎に吐かせました。また、クライマックスの「私がずっと探していたものは…」の部分は、最初は別の言葉だったのですが、大先輩であるプロの漫画家さんにアドバイスをもらう機会があり、「こちらのほうがわかりやすい」ということで訂正しました。「セリフ1つで伝わるメッセージは随分変わってくるんだな」と、とても勉強になりました。

――“神崎が大切にしていたハンドクリームを探す”という一見シンプルなストーリーでしたが、読み応えを持たせるために工夫した点は?

田丸:長めの物語を制作する時は、4ページごとに起承転結をつけるようにしてます。状況説明とキャラの感情を交互に描いたり、ところどころギャグシーンを散りばめたりなどして、単調にならないように心がけています。本作では4ページごとに一度は目を引くシーンを入れるようにしました。

――最後に今後の漫画制作における目標を教えてください。

田丸:今後もSNSに漫画をアップしていく予定ですが、反応次第では商業誌に投稿や持ち込みもしていきたいです。「商業誌で受賞できるレベルの作品を作れるようになる」ということを今年の目標にしているため、そこに向かってどんどん執筆に励みたいです。種を蒔けば必ず芽が出る!これが私のモットーです。

■田丸はるかさんのSNS
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