【漫画】顔を出したくない少年と優しいお兄さん……コンプレックスと純愛を描いた創作漫画が尊い
クレッグが赤髪だった理由
――なぜ『顔を出したくない少年と優しいお兄さんの話』を制作したのですか?
坂野道:ハロウィンの日に単発でオバケの仮装で顔が見えない少年がお兄さんにグイグイ行く1ページ漫画を描いたのですが、「その時の2人をストーリー化してみよう」と思ったことがキッカケです。ただ、その1ページ漫画とは全くの別物になりました。
もともと海外の子供の友情や成長を描いた作品が好きでよく見ていました。同年代同士の物語も大好きですが、年齢や境遇の違う二人が出逢ってお互いに良い影響を与えていく物語を好んで見ていた過去もあり、それを思い出して「自分でも描いてみよう」と思いました。
――だから海外が舞台だったのですね。
坂野道:どちらかというと、この年齢差なら「ベビーシッターとして出会うほうが自然では?」と考えたことが大きいです。「高校生がアルバイトでベビーシッターをするのが当たり前の世界線ならやはり海外かな」と。
――ベンとクレッグはどのようにして生まれたのですか?
坂野道:まずクレッグから浮かびました。『にんじん』や『赤毛のアン』といった小説が好きだったので、赤毛の主人公にした部分はあります。とはいえ、そうした作品の主人公のような性格にすると強く逞しくなってしまうため、優しくて弱い性格にしました。
――一方、ベンは?
坂野道:王道の清潔感のある人当たりのいい青年にしたかったので、ビジュアルは私の好きな海外俳優さんを集めて凝縮した感じです。性格は「スクールカースト上位だけれど、誰にでも優しくて男女問わず人気のある」みたいな青春映画の主人公を意識しました。はっきり言ってしまうなら『ハイスクールミュージカル』のザック・エフロンです。
ダンボールを被っていた深いワケ
――なぜ顔を隠すためのアイテムとしてダンボールを選んだのですか?
坂野道:自分の顔が原因で意地悪されていることを母親に知られてしまうと、「母親がショックを受けてしまう」とクレッグは心配しています。とはいえ、顔は隠したい。年齢的に自分のお金で顔を隠すアイテムを買うことはできず、かといってあからさまに顔を隠せるアイテムをほしがると母親に気づかれてしまうかもしれません。
――クレッグの心理を紐解いて段ボールにいきついたと。
坂野道:はい。当たり前に家庭にあり、なおかつ小さい子供が母親に「使ってもいい?」と聞いても不自然ではないアイテムとしてダンボールになりました。こういったクレッグの心理を想像して「ダンボールなら自然だろう」と思ってダンボールを被ってもらいました。
――ベンは自己評価の低いクレッグに愛情を注ぎ、元気づけます。「じゃあ僕が大人になった結婚して 僕が会った中で一番優しい人」というピュアな言葉もあり、双方が特別な感情を抱いていきますね。
坂野道:ベンもクレッグに特別な感情を抱きますが、2人のやりとりや背景を見てくれた読者さんに、ベンの気持ちは「特殊な性癖などではなく純愛である」と意識してもらうため、プロポーズも最初のキスもクレッグからしています。
――最後に今後はどのように漫画制作をやっていきたいですか?
坂野道:少しでもたくさんの“好き”を形にできたらと思っています。そのために日々学んで描いてまた学んで、なにより楽しく描き続けていきたいです。